春近し

3日、文藝春秋特別版のコラム5本、ゲラ直し。行数不足があったり、引用文に朱が入っていたり、もうガタガタ。プロとして恥ずかしきことなり。冷や汗かきながら、書き足し、直しを入れる。
午後、なにもわからぬまま触ってきたパソコンについて、知り合いから紹介されたパソコン名人に来宅してもらう。ウィンドウズが専門で、ぼくの使っているマックは専門外ということだが、さすがにあっというまに、あれこれ、こちらは見たこともない画面を引き出し、あれこれ説明を受ける。しかし、9割は何を言われているかわからない。わかりすぎている人が、わからなすぎの人に教えるのがいかに難しいか、これでわかる。それでもこれまで溜まりに溜まった文書の一部を削除することに成功。それだけでもよかった。
夕方、前回にも書いた娘の幼稚園時代からのつきあいのあるパパさん4人で飲み会。中国・北京に単身赴任したkさんが一時帰国して、それを囲む会。中国、物価が安く、同じ給料をもらっていても、使いでがある。話を聞いていると、ほとんど大名なり。ちょっと約束より一時間ほど早く待ち合わせ場所についたので、中央書房支店で久世光彦『簫々館日録』中公文庫400円を買って、ドトールで読む。いやあ、おもしろい、おもしろい。が、隣に座ったカップル、つきあい始めたばかりらしく、男の舞い上がった緊張が伝わってくる。気が散ってしかたない。どうも、今度、家に彼女を呼ぶことになった。そのことで、男の頭のなかがパラダイス。どうもまだ二人は話の感じだと清い仲だな。女の子のことが可愛くてしかたない。男の会話、トーン高く上ずって、店内に響きわたっている。恥ずかしい! これ、ビデオに撮られて、30年後に見せられたら、気絶しそうな内容。いやあ、ぼくだってこういうことありましたけどね。
4日、いい天気だ。春はもうそこまで。筑摩から枝雀爆笑コレクション4と、『ちくま文庫解説傑作集』が届く。後者には、ぼくが川本三郎さんの『東京おもひで草』に書かせてもらった解説も収録されている。それにしてもすごいメンバー。赤瀬川原平池内紀内田樹大島弓子小沢昭一角田光代鹿島茂と並び、川本さんも、久世光彦も、種村季弘も、坪内さんも書いている。これはおもしろいアイデアなり。非売品なので、書店では手に入らないというのもちょっとうれしい。これ、市販してもいいんじゃないかな。
友人白石から、今年夏の吉田拓郎かぐや姫つま恋」のチケット入手の報を聞く。やったぜ! 今年の夏は、いつもより熱くなりそうだ。
夕食後、娘を乗せて、「ブ」2軒と、イトーヨーカドーヘ散歩。イトーヨーカドーの本屋で、週刊新潮創刊号復刻、「論座」4月号、娘に「小学五年生」などを買う。「論座」、書評欄を一挙30ページに拡充。記念として、高橋源一郎三浦雅士豊崎由美(崎は可の上が立)の鼎談あり。坪内祐三さんの連載「雑読系」が一回丸まるつかって、『気まぐれ』と、大宅文庫でのぼくとの出会いについて書いてくれている。最初、坪内さんの文章だけ立ち読みして、途中からへそのあたりがなんとも熱くなってきて、あわてて、レジへ持っていく。よく、これだけ好意的に書いてくれたなあ、と思う。しかも、図々しく言えば、ぼくと坪内さんにしかわからないシンパシーのようなものに触れられていて、やっぱり、ぼくの方でもそう思っていていいんだな、と確信する文章だった。
工作舎から届いた『気まぐれ』10冊にサインする。
ケーブルで見た、オランダ・ベルギーの映画「静かなる海」が素晴らしかった。