サインツアーから無事帰還

雨、午後3時。12時間近く寝て、正午前に起きる。身体の節々が、油が切れたようにギシギシ言う。この数日のこと、メモがわりに振り返っておく。
17日、出発ぎりぎりまで仕事をして、家内と車で家を出る。上々堂へ寄り、精算金を受け取る。家内の手製文庫カバーの売り上げと一緒だが、4万7000円ほど。あやさんから受け取ったメモは、同店と三省堂有楽町店でバイトをしているOさんからのもので、三省堂有楽町店で『気まぐれ』、7冊入荷して3日で完売した、とのお知らせ。ビジネスマン御用達の店、ぼくのようなものが出す本が、それほど売れるのは珍しい。いい知らせだ。
この日は、夕方京都着。実家に荷物を下ろし、そのまま恵文社一乗寺店ガケ書房とサイン行脚。
18日。左京区の実家から、阪急四条まで歩くこととする。ちょうど9時ごろ、京都市美術館の前を通りかかる。そういやあ、もう何十年も入ったことないな、と思い、きゅうきょ美術館へ。「花鳥風月」ナントカ展をやっていて、近代の日本画を中心に屏風絵、掛け軸など、名作がふんだんに展示されてある。日本画をまとめて見ること、少ないが、空間のいかしかた、造形の妙、モダンを楽しむ。
1時ごろ神戸着。三ノ宮から歩く。元町「ちんき堂」を覗き、戸川さんに挨拶。雑誌数冊と、ショーケースにあった川崎ゆきお表紙の昭和52年「プレイガイドジャーナル」を700円で買う。戸川さんの話ではけっこう「プガジャ」は出るとのこと。ふつうは350円をつけるが、これは川崎ゆきお表紙というプレミアで700円。
2時前「海文堂」着。3時までにサイン会、『気まぐれ』27冊プラス、いっしょに並べてもらった自著、スムース文庫「風来坊」などが売れる。講師時代の知人、大学時代の友人、関西同人誌時代の仲間など知り合いもたくさん来てくれた。それにこのブログを読んでくれている人がたくさん来てくれたのには驚く。それも女性が多い。元池袋リブロ、現金沢リブロの荒木幸葉さんまで来てくれた。悪いなあ。ほんとうにみなさんありがとうございました。店長の福岡さんは、どうも神戸の読書界のキーマンらしく、ぼくの知人や読者はみな福岡さんの知り合いなり。関西人のあたりの柔らかさ、気配りが福岡さんの魅力。
このあと、扉野くん、にとべさん、大島さん、北村くん、高橋さんなどと六甲道の「宇仁菅書店」、できたばかりの「口笛文庫」を覗く。このことは「彷書月刊」に書くつもり。北村くんは、25才と若いが、いま古本道まっしぐらの新進気鋭。いちばんいい筋を真直ぐ歩いている感あり。にとべさんは、今年もひとはこ古本市に参加、とのこと。再会を約束して別れる。
移動は駆け足で、サイン会に来てくれた「畸人郷」という関西ミステリ研究会の野村さんのお誘いで、梅田の喫茶店で開かれる同会の集まりに少し顔を出す。昭和45年から続いている会らしい。
移動は荷物を抱えて走る。お次は京橋で、高校時代の友人との飲み会。あまりに大勢の人と言葉を交わし、喋って、湯当たりならぬ人当たりしてきたが、高校時代の友人なら、もうスイッチを切ってだいじょうぶ。オフ状態で仲間4人で居酒屋へ。遅れて山本善行も参加。それに、この日、高校時代いちばん仲の良かった友だちIが、ぼくに内緒で呼ばれていて、その出現に驚いて、思わず、京橋駅前で抱きついて大声で名を呼んでしまう。
最終ぎりぎりの京阪で善行と京都まで戻り、弟の店「ディラン・セカンド」で最後の締め。
19日、名古屋へ。少し早く着いたので、いつもは地下鉄で行く所を、徒歩で栄へ。伏見通りという大きな通りをずんずん歩く。途中、納屋橋という橋のたもとに、くすんだ灰色の三角屋根の大きな建築を見つける。「ナゴヤパレス」とカタカナで文字が。どうやらかつて映画館だったような造り。名古屋モダニズムの一級物件なり。
中日文化センターで、担当の佐藤さんから『気まぐれ』の取材を受け、1時間半の授業をする。ここですでに買ってくれた生徒さんたちに『気まぐれ』のサイン、そして宅急便で送ってあった荷物に入れた『気まぐれ』5冊を売り切る。つまり全員の手に渡ったことになる。これでこの講座も4回目。来月がラスト。だいぶ空気が温まってきていたので、名残り惜しいような気持ちになる。
名古屋駅から東京へ。その足で高円寺へ。食事をして、十五時の犬を久しぶりに覗き、ちくま文庫の『井伏鱒二文集2 旅』を500円で買う。本の集め方、並べ方が、店に真剣にとりくんでいる若い店主の姿があらわれている。ほんと、いい店だ。
そして今回のサインツアーの大トリ、工作舎主催の「コクテイル」イベント。ゲストにタムラさん、坂崎重盛さん、それに挨拶しそびれたが、伴田良輔さんも来てくれて、わいわいと過ごす。最後は、高円寺の100円ショップで仕入れたカップとソーサーに、金色マジックでイラストを描いたのを、ジャンケン大会でプレゼント。30名近くいたなかで、たった2回のジャンケンで、古本女性版おぎやはぎの片割れ、河野ちゃんがゲット。引きの強い娘なり。
まあ、めちゃくちゃに疲れたが、それ以上に、読者がいることの幸福をかみしめた3日間だった。あらためて、みなさんありがとう。