ニラハウスに見参

朝、新聞取りに玄関を出たら、すばらしい快晴。しかし風が強く、空気は冷たい。
午後、南武線小田急線と乗り継ぎ、赤瀬川原平邸を訪ねる。サンデー毎日の著者インタビュー。小田急線の某駅で降りる。いきなり急坂で、そのてんぺんまで上って、下りかけた十字路を左折すると、あの「ニラハウス」が見える。藤森照信設計。屋根にニラが植えてあるのだ。周辺は高級住宅地ながら、そのなかでも赤瀬川邸は目立つ。大きな窓から斜面に立つ家々と、竹林が見える吹き抜けのリビングで一時間ほど話を聞く。すべて木を基調としている作りなので、光が優しい。「太陽」の「ニラハウス」紹介のページを見ながら、その家のなかにいる。なんてぜいたくなんだろう。
じつは、この某駅からすぐのところにO書店という古本屋がある。ちょっと覗いてみたら、かなりいい品揃え。みすずほか、人文書がたくさんある。均一も豊富で、小森陽一『世紀末の予言者・夏目漱石講談社を100円で買う。赤瀬川さんに、この古本屋のことを話したが、知っているが行ったことがない、という。奥様もそばにおられて、「へえ、今度行ってみます」という。最後に持参した「太陽」の赤瀬川特集号の表紙に、サインをしてもらう。へへへ、役得、役得。
帰り、立川で乗換えのとき、ホームの立ち食いそばで「おでんそば」を食べる。いわゆる平天が入っているのだ。これがなかなかうまい。あとで入ってきた、谷敬を思いっきりしょぼくしたような客が、「下りのホームの店はなくなっちゃったんだね」と店のおばさんに話している。駅の改良工事で、2年くらいは再開しないと言うと、えらくそれを惜しがる。その客いわく「下りの店のほうが汁が塩っぱいんだよね。味が違うの」。おばさん「そうですか、材料は同じですが、多少の違いはあるかもしれません」。これで済む話なのに、男はしつこく「下りのほうが塩っぱいの。やっぱり田舎へ帰るほうと、東京へ向う方と味を変えてるんだな」。田舎って、ここ立川ですけど。そして、「ぼくは下りのほうが好きなの」とダメを押す。なんか、そのこだわり方がちょっと滑稽なんですけど。上りと下りのホームで、汁の味を変えてる、ってこと、あるのかしらん。
国立「ブ」で、編集会議のフリーライター大研究号を250円で。この2月末から、新風舎の教室で、ライター講座を受け持つことになったのだ。その参考に。文庫棚から庄野潤三『うさぎのミミリー』新潮、火坂雅志『美食探偵』講談社を買う。『美食探偵』は、村井玄斎を探偵役にした、異色グルメミステリ。村井玄斎マニア(?)の黒岩比佐子さんに教えられたのだが、見ると、親本が出たとき、サン毎で短評を書いたことを思い出す。やれやれ。