前田一『サラリマン物語』

朝、早起き。10時に松戸市のH小学校のpTA会合で講演をすることになっている。同校校長が、ぼくの本の読者で依頼があった。3年前、神保町で声をかけられ、お話ししたこともある。武蔵野線を使えば、新松戸まで一本、乗り換えてすぐの駅で下車。図書室に30名ほどお母さんたちが集まる。「心を耕す読書術」として、本とのつきあい方、楽しみ方を話す。終わって「質問は?」と言うと、バラバラと手が上がる。話はすべて「子どもと読書」について。ああ、そうだ、そういう話をもっとすべきだったのだと思う。ただし、当方にその方面のノウハウはあまりなし。
校長から「お昼はご一緒に」と言われ、どこかへ行くのかと思い、恐縮するそぶりを見せると「給食をご一緒に」という意味。憧れの学校給食だ。この日のメニューは、しそごはんに海苔、野菜を煮付けたものに魚のフライ、味噌汁、牛乳。いやあ、おいしくいただきました。
いろいろお世話いただいたpTAのママさんが、苔花堂の川守田さん(現在は五本木さん)の友人というので、「ええっ!」と驚く。
帰り、同校の先生に車で馬橋「ブ」まで送っていただく。そこから馬橋駅まではすぐ。一冊だけ買う。これがすごい。阿久悠瀬戸内少年野球団文藝春秋、の単行本で、つまりカバーが横尾忠則なのだ。これまで2度しか見たことがなく、いずれも1500円以上ついていたしろもの。それが105円で買えた。やっぱ、じっくり見てもいいわ。中身は申し訳ないがいらないぐらい。
帰りは常磐線に乗ったのだが、唐木田行き、とか変なことを言う。どこだ、唐木田。千代田線になって、京小田急多摩線とつながっていく。とんでもない線だ。あわてて乗り換える。日暮里から山手線、神田から中央線でお茶の水下車。書窓展へ。古書一路さんと会場で会う。こんど、五反田の古書展にデビューする由。もう、なんだかずっと古本屋さんをやっている風情だ。
会場で買ったのは藤澤桓夫『花言葉』。昭和21年弘文社。300円。新聞小説だったらしく、挿絵が田村孝之助。ところどころ入っているが、この本、所持者が新聞連載の切り抜きを続けていた人で、連載時に使われた挿絵で、本では使われていなかったところについては、新聞切り抜きをなかに貼っている。つまり田村孝之助の挿絵完全版になっている。おもしろい。
それから珍しく目録で玉晴(実際には、玉の、の位置が違う)に注文した、前田一『サラリマン物語』昭和3年、東洋経済出版部、3000円が確認してもらったら当たっていた。バンザイ。前から欲しかった本だが、けっこうな値がついていて手が出せなかった(某店で、正続2冊で4万2000円)。今回の本は、印あり、奥付の検印紙が取れているが、状態はきわめていい。「腰弁のデフィニション」「高等遊民の洪水『就職難』」「腰弁の晴衣『首吊り一著』」「腰弁の足『省線電車』」と、まことに楽しい内容。サラリーマン文献のトップクラスなり。