国立からバスに乗ったら、日本橋に着いた

忘れないうちに昨日のことを書き留めておこう。朝、TBSの迎えの車に乗り込むと、運転手が、「この近くで大変なことがありましたね」という。何かと思えば、東大和の一夫多妻男の話。東大和は隣の市、近いと云えば近いが。この運転手、報道部の取材陣を現地へ運んだらしい。
昨日のぼくの出番、高橋吾郎『週刊誌風雲録』を紹介したが、時間配分を完全に勘違いし、原稿の3分の2のところで、いきなり森本さんに「ハイ!」と言ってストップをかけられる。変な終わり方になってしまった。デジタル時計を睨みながら喋るのだが、今日は少し時間に余裕があると思って悠々と喋ってしまったが、逆に巻きだったのだ。しばらく「しまったなあ、しまったなあ」と小声でひとりごとを言う。
この日は夜、サンデー毎日の新年会が日本橋近くの中華である。ところが日本橋へ行くのに、7時間半もかかった。
昼前、国立へ出て、銀行で金をおろし昼食。「ブ」で数冊買い、聖蹟桜ヶ丘までバスが出てると知り、それに乗り込む。100円ショップで、タオルや旅行セットのシャンプーほかを買ったのは、どこかで銭湯へ入ろうと思ったのだ。聖蹟桜ヶ丘で「ブ」「いとう」、それに古書展ではいつもおなじみ「二遊館」さんに寄る。駅からは5分ぐらいの距離。外から見ると、ごくふつうの町の古本屋という風情だったが、なかがすごい。なつかしくて、おもしろくて、いちばんいいところがびっしり揃っている。ご主人、同年輩ではないか。70年代ぐらいのサブカル本を中心に、ジャンルとして分けにくい、しかしおもしろい本がいっぱい。これには驚いた。ナンダロウアヤシゲさんが行けば、狭い通路を、丸い身体をごろごろ転がしながら、買い漁りそうな品揃えだ。5冊(3000円)を買ったが、なかでもブロンズ社が1973年に出した、週刊誌大の『ニッポン若者紳士録』は、当時の若者文化を担う各分野の300人を写真入りで紹介。1500円。以前、柾木高司を三浦雅士の別名、と勘違いを書いたことがあるが、ちゃんと柾木も載っている。もちろん、まったく別人だ。松山猛など別人28号というほど若い。雀士やX線技師、レコードミキサー、ギター製作、ボヘミアンなど、なんでここに登場しているのかわからない人もたくさん載っている。そこがいい。
なかの空白部に「パチンコ店がもうける為には」という考察が落書きしてあった。これは所有者の直筆。
レジを本を持っていくとご主人が「こんなところまでようこそ」とおっしゃる。面がわれていたか。「いやあ、おもしろい本ばかりなので正直、びっくりしました」と言うと、「ほとんど会員制みたいなものです」と返ってきた。たしかにな、古本のこと、かなり深く知っているにんげんが喜ぶ店だ。
このあと、調布へ移動。ここでも「ブ」にひっかかって(つげ義春全集1、を105円で見つけた)、調布からは渋谷へバスが出ていることを知り、おもしろそう、乗ってやろう、時間もあるしと思ったのが間違いで、途中、渋滞にひっかかり、三軒茶屋に着いたのが一時間後。渋谷まであとどれだけかかるかわからない。あわてて降りて、東急で渋谷へ。新年会会場に着いたら時間、ちょうどだった。銭湯なんて、とんでもない話だった。国立から日本橋まで、あみだくじのように移動、7時間半もかかった、とはそういうわけ。
新年会では、サン毎執筆者仲間の山村さん、陣野さんと喋る。なんだか長い一日だった。