井上靖『夜の声』に古書展の文字

お年玉付き年賀ハガキ抽選発表、新聞の発表番号とさっそく合わせてみる。末等の切手シートが5枚、当たっていた。古書一路さん、彷書月刊さん、ほかありがとうございました。昨夜、新阿佐ヶ谷会で木山萬里さんに紹介してくださったとき、川本三郎さんが、「岡崎さんの木山捷平の『軽石』のことを書いた文章が傑作なんですよ」とおっしゃってくださったので、萬里さんに、お送りしますと申し上げた。そのとき、自分でどの本に書いたのか忘れていたが、『古本極楽ガイド』(ちくま文庫)であった。手持ちが2冊しかなかったが、1冊、お送りすることにして、当たった切手シートと引き換えがてら、国立の郵便局へ。
と、なればいつものコース。「ブ」で4冊ほど。岩波文庫、ベッケル『緑の瞳・月影』、それに新潮文庫井上靖『夜の声』を。『夜の声』は、パラパラとめくると「古書展」の文字が飛び込んでくる。買う。主人公の男性が万葉集の研究家で、伊豆に住んでいるのだが、古書展へ行くため、東京へ出るというところから始まる。
慶長本の万葉集を、ある大学から譲ってくれと交渉があり、承諾したが、交渉に来た若い講師がそれをぞんざいに扱い「一体、いくらで譲ってくれますか」なんて、言うのでカチンと来て、譲るのを止める。
本というのものがどういう命を持っているか、彼に講釈をぶったあと「こうしたものには値段はない。人間の心から人間の心へと譲られるものです」とタンカを切る。いいねえ。
豊田四郎、森繁、淡島千景と『夫婦善哉』のトリオによる『花のれん』を見る。吉本の創始者せいをモデルにした山崎豊子原作の映画化。女にだらしないダメ亭主・森繁としっかり女房の淡島と、まるっきり『夫婦善哉』のタッチで始まるが、森繁は死んで早々に退場。とたんに映画に張りがなくなる。淡島はいい女優だと思うが、映画一本を引っ張るほどの魅力はないように思える。