じゃんけんで負けて蛍に生まれたの

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来春、工作舎より『気まぐれ古書店紀行』発刊を記念して、同じく、彷書月刊連載をまとめられた『極私的東京名所案内』を出された坪内祐三さんと、ぼくとで、トークショーをやります。
まだ告知していないので、このブログを御覧のみなさまへ先行予約ということで、以下、報告します。
「人生いたるところ古書店あり」と題し、岡崎武志坪内祐三トークセッションが、池袋ジュンクで、2006年2月23日(木)19時から、4階喫茶室で行われます。
定員は40名。受付は一階案内カウンターで電話予約します。
電話 03・5956・6111
いま酔っぱらってるから、思い切って言いますが、これは世紀の組み合わせですよ。もちろん坪内さんとは初めて。キャパはたった40名。坪内さんだけで即埋まるわけですから、これはちょっと、えらいころですよ。工作舎の担当Iさんは、「お相手が坪内さんだから、武道館を押さえましょうか」と言ったのですが、「まあまあ」となだめて……スイマセン、嘘です。おなじみ高円寺「コクテイル」でも、なにかイベントを考えていますが、これも決まり次第お知らせします。
坪内ファンのあの方、この方、急げ! ジュンクへ。あのう、ぼくのファンという方も、もしいらっしゃったら、ついでにちょっと予約お願いします。


学習院、明大と続けてぼくの古本講座を受講してくれたYさんとその友人で明大受講生のNさんのお招きで、池袋のうどん屋「硯屋」で酒宴を。こういうとき、つなぎ役として日本一、われらが若大将・向井くんも一緒。
地図で確認すると、池袋のジュンクを過ぎたまだ先、目白から歩くのとあまり変わらない。その少し先に、往来座という古本屋もある。ここは以前、池袋西口東京芸術劇場に入っていた「古本大学」が、移転し改名した店とのこと。ちょうど26日、上々堂へ行ったとき、店番のアヤさんに「往来座、行かれました? いいお店ですよ」と推薦されていたのだ。
そこで、喧噪混雑阿鼻叫喚の池袋を避け、目白から歩いて「往来座」、「硯屋」というコースをたてる。もちろん「目白」には「ブ」あり。まず「ブ」で、軽く、中公新書海野弘『世紀末の街角』、小野耕世『ドナルドダックの世界像』、それに集英社のコンパクトブックス、石原慎太郎『てっぺん野郎』を拾って腹ごしらえ。『てっぺん野郎』は、「小さい時から高い所に上がるのが好きだった上杉朗太」が上京し、株の世界でひと暴れする話。まるでホリエモンみたいな奴である。
往来座(南池袋3・8・1 電話03・5951・3939 盆暮れ以外は無休 11時から22時まで)は表ぐるりと均一の棚がいくつもあり、店内も思ったより遥かに広い。均一をざっと目で追い、なかへ入ったところで声をかけられた。見ると今夜、酒宴の主人となるYさんNさんのカップル。「ほかに行くところ、ないの?」というぐらい、Yさんとはこれまでにもかち合った。と、今度は往来座のご主人から、「あ、岡崎さん、どうも」と声をかけられた。まいったなあ。
往来座は、もう20、30年はこの地で商売を続けていると思われるほど、落ちついた店だった。まず蔵書量がすごい。文芸書中心に、人文、美術、演芸とオールマイティなのだが、そのいずれのジャンルもたんねんに細かく拾っていることがわかる。文庫一冊にいたるまで、目端の利いた店主の息がかかっている感じ。文庫もちくま、ちくま学芸、講談社学芸、文芸といった横綱級がびっしり揃っている。しかも複本が2册3冊とある。これには驚いた。店主が日々、店と真剣に向き合っているのが、ものの数分もいればわかる。
これまで池袋の南側は、ジュンクへ行くのでさえ遠く感じ、その向こうはさいはての地、というイメージだったが、そこ(明治通り)に灯りが点ったという印象だ。
いつのまにかYさん、Nさんの姿が見えなくなり、酒宴の時間が迫ってきたので、ちょうど探していた『池田澄子句集』を300円で買う。もっと買えそうに思えたが、時間がなくて悪かった。再見!
ここまで書いたら疲れた。酒宴のことは向井くんの日誌を読んでもらうことにして、帰り、向井くんと高田馬場まで歩き、「ブ」へ寄っていったのも、この晩の話題がほとんど「ブ」いじりに終始したからだ。
丸谷才一の『いろんな色のインクで』マガジンハウスを1000円で買い、東西線で地下鉄に乗り込んだら、中央線がストップしているとのアナウンスが。まいったなあ。
池田澄子の句集からこんな句に目がとまる。
鰯雲一駅歩いてしまいけり
春の正午のとうに止まっていた時計
倒れ咲く野菊跨ぐと決め跨ぐ
砥石と刃濡れて相減り冬は冬
まず口をあけて暑き日始まりぬ
じゃんけんで負けて蛍に生まれたの
生きるの大好き冬のはじめが春に似て
……「じゃんけん」の句にはまいったなあ。