『優しすぎて、怖い』は怖い

昨夜、名古屋、京都から帰ってくる。名古屋栄文化センターは3回目。空気がだいぶ温まってきた。最初に生徒による買った古本の発表。AさんとOさん、二名に「私は私の風邪をひく」のお言葉を入れた、師範からの免許皆伝の色紙を手渡す。担当のSさんから、来年も、引き続き、講座で何かやれないかと打診される。私小説を読むとか。おもしろそう。自分の勉強にもなることができればいい。
終わってすぐ名古屋駅青春18きっぷの第一回を使って京都まで。途中、大垣を越え関ヶ原のあたりからまるで雪国の景色。旅人としては無責任にいい気分。名古屋でも雪がちらついてた。きゅうきょ、大津で下車。古今書院を訪ねる。いぜん、大津にいたころ、よく寄った店。いまは改装され、二代目さんが継いでいる。これを彷書月刊の取材とする。あれこれ話を聞けてよかった。
人影もない、淋しい町を大津駅まで戻る。また電車に乗り込み、京都駅まで行ってしまうと、河原町周辺まで戻ってくるのが大変だ。山科で下車し、地下鉄に乗り継ぎ、三条京阪前へ。いちおう「ブ」へ。なにもないや。小林信彦『大統領の晩餐』はちくま文庫版は持ってない。買う。今回の旅の途中、読む本をと、文春文庫海外青背の棚に三冊並んでいた、ジョイ・フィールディング『優しすぎて、怖い』を買う。三冊並んでいたから、よく売れたのだ。つまり、期待できる。これはけっきょく、東京へ帰るまでに読了。つまりおもしろかったのだ。中年の主婦が町中でとつぜん、自分がだれだかわからなくなる。服には血、そしてポケットには大金が。混乱のなか、この主婦がどういう行動をとるか、またいったい誰なのか、血と大金の理由は。ぐいぐい読み手を引っ張って行く。ドラマは二転、三転しながら、凡庸なるぼくの頭では予想もつかなかった方向へ。とりあえず、時間を忘れ、おもしろい本をという人におすすめする。「ブ」を2、3軒まわれば105円で見つかるはず。
帰宅してから、あれやこれやで時間が過ぎる。年賀状を書いたり、まだ残っている締めきりがとりあえず5つ。それに、『気まぐれ古書店紀行』カバーに、ある仕掛けをしたいと編集者のIさんから持ちかけられ、それも年内に。
日曜夜は山本と弟の店「ディランセカンド」で飲む。山本もやっぱり三条「ブ」へ行っていた。「なんにもなかったなあ」と言いながら、「2冊買ったけど」と続く。ぼくとまったく同じ。これ、どういうんでしょうかねえ。弟を交え、上方お笑い談義。そこへ、非番の店のバイトくんが来ていて、紹介される。弟いわく「顔が川崎のぼるの描く絵みたいやから雇った」。なるほど、Gペンで描いたような濃い顔。すると彼、「『古本生活読本』読みました」という。意外な展開。彼女がぼくのファンで、読め、読めとすすめられたのだという。どこにどんな読者がいるかわからない。