神田・本郷散歩

16日、つまり昨日。このところ早く目がさめる。午前中に、サンデーの原稿を入れる。ひと仕事終え、自分で自分を許可して、五反田へ。着いたのは11時30分。兵どもが夢の跡の古戦場を、兵が見落としたものを拾っていく。それでも拾えるもんだ。明星歌本を一冊100円で10冊ほど、ほか16册を買う。『首都圏・昭和60年』は昭和40年に出た、未来都市展望の本で、全編に真鍋博が都市のイラストを描いている。200円。石川雅章『ボーリング教室』はボーリングブーム真っ盛りの1969年の本で、モデルが松原智恵子、いまみると、そうとう馬鹿馬鹿しくていい。100円。児童書『パパは落語家』は、絵が伊東重夫なので買う。200円。立川談志『現代落語論』は、先日の談四楼さんとの対談のとき、持参しようと探したら、部屋になかった。で、400円で買っておく。毎日新聞社刊の『東海百年』は名古屋文献で200円。上ですごいの見つけた。『スバルの歴史』は、スバル360のカタログ。薄い小冊子なのに、棚差ししてあって、みんな気づかないのだ。気づけば放っておけるような物件じゃない。200円。近くにいたユトレヒトさんに自慢する。
会場で、なんとなく知ってる女性のような気がして、後ろから本で突いたら、違う人だった。でも、ぼくの顔を見て「あ、岡崎さん」という。阿佐ヶ谷に先般開店した「風船舎」の店主だった。あわてて、ごまかして挨拶する。でも、知ってくれていてよかったよ。勘違いして、突いたんだから。人違いなら変質者だよ。
神保町へ移動。コミガレで3冊、タテキンで2冊買う。後者は片岡義男『ぼくはプレスリーが大好き』の三一書房版だ。めずらしいなあ。400円。100円文庫から『アポリネール傑作短篇集』福武、を抜くと、なかにハガキが挟まっている。訳者の窪田般弥が某者に宛てたハガキだ。買う。
このあと、7時から高円寺コクテイルで人と待ち合わせ。4時間以上ある。気まぐれをおこし、水道橋まで地下鉄で移動。JR水道橋ホームのコインロッカーに古本の荷物入れ、JRでお茶の水へ。そこから徒歩で神田明神清水坂、東大構内を抜け、菊坂、水道橋と散歩する。東大構内ではイチョウの落ち葉を一枚拾い、手に持っていたガイドブックの栞に。本郷赤門前、第一書房店頭均一から、小林秀雄『近代絵画』新潮文庫(これだけ、絶版なんだ)、遠藤周作『オバカさん』角川文庫を拾う。店内へ入ってお金を払ったら、ちゃんと袋に入れてくれた。意外。近くのレトロなフルーツパーラーでコーヒーを飲む。これはなかなかいい時間だった。
高円寺で、もと毎日「アミューズ」「ヘミングウェイ」でいっしょに組んだMくんと飲む。さいしょ「コクテイル」、つづいて「テル」へ誘う。「テル」は今夜も満席だった。みなこの店との別れを惜しんでいる。十数年前、ぼくがいちばんよく通っていたころ、店に来ていた女の子(いまは結婚してお母さん)も来ていた。「岡崎さん、わたし、覚えてます?」「覚えてる、覚えてる」。ラストへ向けて、「テル」佳境に入っている。
帰り、中央線とちゅうで止まる。あちこちでゲロを吐いているやつ、残骸を見る。師走である。国立へ着くと、またもやタクシー乗り場は長蛇の列。まいったなあ。重い荷物を持ち、厳寒のなか、「むひょひょうひょう」と言いながら、自転車で帰宅。こりゃー長生きできんわい。