きりんに「岡崎のアホ!」と言われた

朝、あくまで冴え渡った寒い朝だ。今年中に、なんとか近くの低山を散歩したい。
とにかくこのところ、泳ぐように原稿を書き続け、いったいどれをいつ書いたかが不明だ。おまけにゲラがファクスで送られてきて、またそれを返す日々。インビテーションの小池昌代『黒雲の下で卵をあたためる』書評が意外にてこずり、けっきょくうまくつかまえられなかった恨みが残る。逆に、「潮」の川上弘美『東京日記 卵一個ぶんのお祝い。』がじつにあっさりと、書評にまとまってしまった。この差はどこからくるのか。どちらも非常におもしろい本だったが。
TBSの放送原稿、サンデー毎日の文庫コラムを送り、朝日新聞ベストセラー快読の原稿を書いたのは昨日か。ラッシュはとりあえずこれで過ぎた。
昨日、大阪のテレビ番組録画のため、日が落ちてから国会図書館へ向う。電話してきたNくんは構成作家だった。この録りが終わったら最終の新幹線で大阪へ戻り、翌朝6時から、今度は同じ番組で秘湯の撮影だという。すでに別のコーナーの録りを終えた「きりん」に挨拶。顔を見たら知ってるコンビだった。毎年、漫才のグランプリ「M1」の最終まで残るコンビで、山本の家で何年か前、ビデオで見た。中身はくわしく書かないが、三番勝負で、二人が選んできた本を、どっちがいいか、ぼくが名前の書いた札を上げて判定する。負けたほうが罰ゲームがあるというので、罰ゲームを受けたらおいしい方の相方が負けるように、最初から決めておく。「そのほうがええやろ」と言うとNくん、「はい、ようわかってはりますねえ」。そら、大阪のテレビ、何十年見てきたと思うてんねん、ということ。
わざわざ国会図書館まで来て選ぶ本か、という情けない本の勝負終わり、負けた方、罰ゲームをするため部屋を出るとき、「岡崎のアホ!」と言って去る。一瞬ドキッとする。が、そうか、そうだな、そういう流れやなと納得。漫才の若手にアホ呼ばわれされたこと、じつはちょっとうれしい。仲間に入れてもらった感じ。番組は「きりんの○○」という正月特別番組になるらしい。関西の人は見てください。東京の人には、ちょっと見てほしくないかも。
Nくんから、とっぱらいのギャラを受け取り、めちゃくちゃ寒い夜を家路につく。高円寺下車。今年で閉店する「テル」へ寄ったら、ちょうどママ(ばあちゃん)がいた。店は満員。閉店ということで、昔通った常連が大挙押し寄せたのだ。席はなく、ぼくはカウンターのなかに入り、オールドボーイたちと言葉を交わす。みな六十代。顔がみんな違う。まるでイタリアのマフィアみたいな顔だちが並ぶ。映画の一シーンを見ているようだった。みな、ほんとうに久しぶりに「テル」を訪れて、くしゃくしゃの顔で酒を飲んでいる。そして、足がふらつくママさんをエスコートして、みんなで暗い路地へ消えていった。
残った現在の常連のメンバー数名と「なんか、めちゃくちゃかっこよかったねえ」としきりに感嘆する。客が置き忘れたタバコがあり、2本だけ吸う。このタバコはうまかったなあ。
今日すなわち14日。小学館から、吉田篤弘さんの長篇『78』が送られてきた。クラフトエヴィングの吉田さん、さいきんすごい勢いで小説を書いているなあ。午後、パラフィン紙を買うついでに、松栄堂書店ギャラリーを覗く。そのあと「みどり文庫」さんへ行くと、古本屋「夢屋」のご主人が来ていた。挨拶するのは初めて。『気まぐれ古書店紀行』にも登場。あれこれ話すと、おもしろい話がいっぱい出てくる。
○追加
明日、きゅうきょ新風砂の取材入る。TBSは今年は明日が最後、ベスト3を発表します。それに、晩は、蟲文庫さんを囲む会。蟲文庫さんが倉敷から上京。そこにハルミンさん、海月書林さん、アクセス畠中さんが参加。これはもう惑星直列です。ぼく一人だと心臓がパンクしそうなので、こういうときは向井くんに受けとめてもらおう。ほんと、明日、東京に地震がおきるかもしれません。それぐらいこの女性の顔ぶれはすごいぞ!