あちゃあ、お笑い古本道場、やることに

昨日書いた大阪のテレビ番組、出ることになってしまった。経緯はこうだ。昨夜、産経新聞の原稿「ひらかたパーク菊人形閉幕」を書き、今日、午前中から中央公論のベストセラー温故知新で『生協の白石さん』を、中島らもの『明るい悩み相談室』にからめて書く。どっちもボディーのある少し長めの原稿で、何度か息継ぎしながら書く。
さて、午後。『気まぐれ古書店紀行』で揃わない店写真があり、そのなかに西荻音羽館、興居島屋があった。じゃあ、撮りにいくべと気分なおしに出掛けた。その足で荻窪まで川沿いの道を歩き、海月書林が限定で店を出しているカフェ「ひなぎく」へ寄る。市川さんがちょうどいて、あれこれ話す。「ひなぎく」はもとジャズ喫茶。山小屋ふうのいい雰囲気。コーヒーもていねいにいれたものでおいしかった。
とうぜん、ここまで来れば「ささま」の均一詣で。10数冊を買う。三鷹まで電車で移動したところで携帯に電話。それが、某番組のディレクターもしくは構成作家のNくんだ。以下会話。
ぼく「おう、Nくん。電話待ってたんだよ」 N「すいません、マンガの鑑定という企画、国会図書館から断られまして、バタバタしてまして」 ぼく「それから、きみ、ぼくのほかにいろんな人に声かけたでしょ」 N「そうなんです。あちこち断られて、最後に岡崎さんにたどりついたという」 ぼく「なんや、おれが最後かい!」(もう、このへんから、腹がたつというよりおかしくなってくる) N「で、岡崎さんに企画を変えてどうしてもやってほしいんですけど」 ぼく「日はいつ?」 N「それが言いにくいんですが」 ぼく「どうせ、驚かすんやろ」(もう完全に大阪弁) N「ええ、じつは明日なんです」 ぼく「なに、明日!」 つまり、もうぼくが断ったら番組は終わり、ということになる。このあたりで、引き受けるしかないムードが。 ぼく(笑いながら)「よっしゃ、わかった。やったる、やったる。それで、ギャラはいくらくれるの?」 N「それが大阪のテレビは安いんです」 ぼく「わかってる、わかってる」 N「岡崎さん、ラジオに出てはりますよね。あれは幾らもらってらっしゃるんですか」 ぼく「あれは、たった5、6分やし、ラジオやからな。○万円や」 N「……(無言に)」
ぼく「どうした、ぶっちゃけて言うてみい」 N「それが、一万円なんです」 ぼく「ええ、いちまんえん! それで明日かいな。そら、出る奴はおらんで。ぼくもイヤや」
と、ここで少しだけ交渉し、せめてラジオ並みのギャラで、とうとう引き受けることに。内容はがらっと変わって、テーマを決めて、若手芸人二人が国会図書館のなかから本を探してくる。それをぼくがどっちがいいかを決めるというもの。正直言って、こんなバカバカしいこと、ぼくぐらいしかできんやろ、という気持ちもあり、大阪という弱味もあり、あまりに相手が正直になんでも言うということにも押され、毎日、3、4本の締めきりがあるなか、引き受けてしまった。
あほやなあ、おっちょこちょい、とはこの人のこと。でも、どっかでテレビに出るのが好きなんかもしれんなあ、と思う。そうでなければ、いくらなんでも、これだけ悪条件が重なって、やれるはずがない。マイナスがあまりに重なるとプラスに転じるということがあるのか。
ほんとうは、海月書林さんのこと、ひなぎくさんのこと、あれこれ書くつもりがこうなってしまった。ごめんな、市川さん。