死ぬまでにしたい10のこと

昨夜遅く、ムービープラスで予備知識なしで見た映画「死ぬまでにしたい10のこと」がよかった。まだ23歳の若妻が主人公。失職中の優しい夫、それに二人の娘と母親の家の敷地内に置いたトレーラーハウスに住んでいる。主人公は夜、学校の清掃の仕事をして家計を支えている、美しい女性だ。ようやく夫の仕事が見つかり、「運が向いてきた」と夫は喜ぶが、そのとき妻は病院であと2、3カ月の命と宣告されている。彼女はずっと、それを自分の胸に収めて生きていく。深夜のドーナツハウスで、ノートに「死ぬまでにしたい10のこと」を記し、それをなしとげるために。
死を間近にした女性を描いて、反「セカチュー」の世界にした。周囲の人物の描き方を含め(死の宣告をするのにためらい、キャンディーを手渡すのにせいいぱいの医師がいい)とてもよくできた短篇小説を読んだときのような味わい。新潮クレスト・ブックに収録されそうな。いい映画だった。
自分なら、と誰しも考える。死を宣告されて「死ぬまでにしたい10のこと」とは。彼女の場合、夫以外の男性を好きになる、以外はありふれた、実現可能なことばかりだ。服役中の父親を訪ねたシーンもよかった。ぼくならどうだろう。意外に浮かばないなあ。
本日、重い原稿を二つ抱えていたが、届いた『気まぐれ古書店紀行』のゲラをチェックがてら読み始めたら、とうとう最後まで読んでしまった。あれ、おもしろいや。自分で書いておきながら、なんですが、自分で書いたから、おもしろいという部分もある。というのも、この10年のぼくの過去がここには集約されているからだ。連載が始まったときは、まだ一冊の著書もなかった。よくここまでこれたものだと思う。90回以上の原稿が、こうしてまとめられて、もちろん再読するのは今回が初めて。これが一冊の本になる。いちおう、ぼくの仕事の中区切りになる本になる。本になって一番うれしいのはもちろんぼくだ。来年の一月にはなんとか本に。装幀はおなじみ、石丸澄子さん。それまではがんばって生きていこう。
J・ノベル用に、宇佐美游『石榴熱』実業之日本社を読む。夕方、娘と自転車で玉川上水沿いを一ツ橋「ブ」へ。文庫3冊500円セールをやっていた。ちくま、中公にすぐ取りつくがいいものはすでになし。50音の棚から見始め、9冊拾う。藤森照信『明治の東京計画』岩波現代、ロジェ・カイヨワ『遊びと人間』講談社学術、金井美恵子『時の娘』講談社細野晴臣『レコード・プロデューサーはスーパーマンをめざす』徳間ほか。
いま11時30分。なんとか、Jノベルの原稿だけは明日の朝までに仕上げたい。