怖い夢で目覚めた朝は

朝5時半という早い時間に目覚める。ひとつは、木曜日は隔週でTBS出演の日だから、その体内時計が働いたのと、怖い夢を見たからだ。妻と古本屋に入っている。別々の棚を見てる。背中越しに、妻が、「じゃあこれと、これと、あとこれも」と、次々と豪勢に買っているのが伝わってくる。不安が募る。いったい、どれだけ買うつもりか。店を出て、買った本はどうも店に預けているみたい、そんな彼女にこわごわ「いくら買ったの」と聞くと、「だいたい200万円ちょっと」と平気で言う。カーッと頭に血が上る。怒ったのではない。怖くなったのだ。「いったい、なんで、どうして」と尋ねると、「いいじゃない。お父さんはいつも年にしたらそれぐらい買ってるんだから。わたしも欲しいのがあるの」と、すねるでもなく、怒るでもなく、非常に晴れやかに、そんな顔を見たことがないというほど、キラキラ光る顔で言う。それが余計に怖い。ボロボロと涙が出てくる。妻が壊れてしまった。壊れてしまった。身体を揺さぶって「おい、大丈夫か」と声をかけながら、こっちも泣いている。妻も晴れやかに涙をこぼしている。すぐさま、古本屋へ戻って、しどろもどろになりながら「すいません! いま、妻が買った本、なかったことにしてください。本当に申し訳ない。間違いなんです。間違いだからなんとか」と、もう床に頭をこすりつけて謝っている。huru古本を狂ったように買い続ける罪悪感が露呈したかんじ。もちろん、ぜんぶぼくが悪いのだ。ぼくがいけないことをしたのだ。哀しみで胸がつぶれそうになって、そして目が覚めた。しばらくベッドでぼんやりして、起き上がる。外は雨だ。
朝食を取り、二度寝して、妻のともだちが家に来るというので、外へ退避する。妻の顔がうまく見られないのは、朝の悪夢をひきずっているからだ。なんだか、どうにも申し訳ない、という気がしてならない。傘をさし、駅まで歩き、国立「ブ」を覗き、バタイユ『言葉とエロス』、武田泰淳『身心快楽 自伝』、松居直『絵本をみる眼』などを買い、喫茶店に入る。出ると雨は止んでいた。本屋で、SPA!のグラビアを立ち見。興居島屋と澄ちゃんがグラビア登場と聞き、すわ、水着で登場か、と思ったが、なんでも、なんとか書房という変な名前のミュージシャンの撮影に使われたのだった。
昼、歯医者。教養セミナーという雑誌の古本コラムを書く準備。岩波写真文庫「軽井沢」を取り上げる。ここに、美智子妃(当時)ご成婚の話をかぶせるつもり。岩波写真文庫について、あらためていろいろ調べると面白い。これはひとネタできたな。
夜、メルビル「リスボン特急」を見る。アラン・ドロン、C・ドヌーブ。タイトルから、列車内で起きる華麗な犯罪と恋愛模様と、思ったらぜんぜん違うの。メルビルだもんね。