あのひとはまだ上半身しか夜を抜け出ていない

12日のこと。午前、ビッグボックス古本市。早稲田の若大将の姿は見えず。文庫、新書から以下を拾う。関容子『日本の鶯 堀口大學聞書き』講談社文庫200円、岩崎あきら『チャーリー・チャプリン講談社現代新書100円、三島由紀夫『第一の性』集英社300円、田村隆一『自伝からはじまる70章』詩の森文庫400円。『日本の鶯』は、ずっと行きの車中で「アイ・フィール」を熟読していて、関容子・森まゆみの対談を読んだところだったので、持ってるはずだけど、買う。タイミングだね。
1時に神保町「ぶらじる」で、白水社の小山さんと待ち合わせ。新刊の『ふらんす 80年の回想』白水社をいただく。これは、1925年に創刊された同社の雑誌「ふらんす」の80年分のアンソロジー。当時の版面をそのままいかしたつくり。日本のフランス文化受容の歴史が、この一冊でうかがえる。
タテキンで仕入れた本を、小山さんに見せる。ユリイカ3冊は別として、角川写真文庫の「岡山」。これは、表紙の写真がまるでルノアールの絵のよう。印刷が悪いからね。かえって雰囲気がある。安西均詩集『葉の桜』昭森社300円は、この詩がいいんですよ。
 洗濯機にスイッチを入れるころ電話が鳴る
 あのひとはまだ上半身しか夜を抜け出ていない
 遠くでうなる製材所みたいな音をたて
 電気剃刀で顔を撫でながら同じことをいう
 (「朝、電話が鳴る」)
ラクロ『危険な関係創元社は、ふつうなら上下巻となる大冊がいやに薄いのがおもしろい。紙がインディアン・ペーパーみたい。裏映りすれすれで、700ページ近くあるのに、束が2センチ以下。奥付を確認した小山さんが「おかざきさん、これ、特装本って書いてますよ」。なるほど、函入りで、いい感じだもんな。紙が薄いから買うってものじゃなかったかもしれん。帰宅して検索すると、某所で5000円以上ついてた。ぼくは100円。ところで、『葉の桜』を検索したら、ぼくのこの日誌がひっかかってきて、過去にすでに買っていたのね。
サンデー毎日でこのあと仕事。同時に「絵本」の電話取材。楽天ブックスの安藤哲也さんに電話。パパによる絵本読み聞かせのサイトを作って、活動しているのだ。サンデー終えて、「ささま」へ。均一を漁っていると、野村君に「ひさしぶりでしたね。おからだ、悪かったんですか」と言われる。一週間抜くと、「おひさしぶり」になる。ざっと、買った本を書く。富岡多恵子『丘に向ってひとは並ぶ』中央公論社ユリイカ臨時増刊「ランボオ」、宇佐美圭司デュシャン岩波書店谷川俊太郎『詩めくり』(何冊でも欲しい)、美輪明宏『ああ正負の法則』(パルコ)これは、田中比佐良や富永謙太郎などの古い絵をたくさん使っているのが目をひく。店内から前波仲子『小売店の新戦術』春陽堂昭和6年、525円。このころ、百貨店がたくさんできて、小売店が押される。その対策を説いた本。
このあと中野に戻り、「カルマ」マスターに「絵本」の取材。絵本をたくさん持ってるのだ。そのあと、三鷹上々堂」で石丸くんを取材。絵本の話。石丸くん、高校時代に「月刊 絵本」を月極購読していたという。ええ、意外。「童話を書こうと思ってたんですよ」。ええ、意外。店を早く閉めて、いっしょに11時まで飲む。
今年も『神田神保町古書街』毎日新聞社が出ました。ぼくもあちこち活躍しております。またお手にとってみてください。「ミス古書」の野村さんと、二人で日本の古本屋ベスト20を選んでおります。
ああ、疲れた。あ、紀田順一郎さんから『読書三到』松籟社を贈られました。ありがとうございます。
これからトムズボックスの土井さんの取材、それから毎日の原稿を書きます。今度こそ疲れた。書きすぎやで、ほんまに。