火星から帰ってきた

昨夜、火星から帰ってきた。正確には仙台「火星の庭」から。けっきょくホテルは取れず、日帰りのつもりで、最終近い仙台から東京へのキップも取って仙台「火星の庭」に乗り込んだ。写真で見ただけだったが、解放感があり、いい雰囲気の店。前野久美子さんと話すと、この日、田中栞さんのワークショップの準備、助手をするため手があかないという。すでに待機していた田中さんが、わたしが泊まってるホテルに空室があるかも、と電話してくれたが満杯。どうやら着いてわかったが、観光客というより、全国からよさこいの連が大挙、この祭りに参加するためおしかけ、それがみんな団体で、ホテルを押さえてしまったらしいのだ。
一泊するしかなくなった。火星の庭の店内にでも泊めてもらうつもりで、夜のイベントまで、仙台の古本屋回り。これは「彷書月刊」に書くつもり。なかでも「S」は、つげ義春のマンガにしたいような傑作。
夜のトークショーは30名以上40名近い参加者であふれかえる。なかには東京、横浜から来た人もいた。「ひと箱古本市」「ナンダロウさん」なんてキーワードを発する若い女性にも声をかけられ、この種のイベントとしては異例の成功ではないか。田中さん、前野さん、それに火星の庭第一号の客という岡田とも子さんという、ひと目みただけで、ふつうの人ではないとわかる凛とした銀髪の女性による鼎談。とにかく田中さんの書肆ユリイカ本に対する、並みはずれた情熱にたじたじとなる。翌日は、前野さんへのインタビューで、これまた地に足をつけたことがないと思われる跳躍の人生に圧倒される。すごいですよ、これは。
けっきょく、仙台では、前野さん夫婦のマンションに泊めていただくことに。前野さんのダンナ・健ちゃんは、ちょっと扉野くんともイメージが重なる、穏やかで優しそうな植物系の男性。もとは宮城県立美術館に勤めていて、いまは怪獣の映画を撮っている。マエクミさんとは火と水のコンビともいえよう。
翌日、火星の庭での前野さんインタビューを終え、前日に訪問ずみの田中さんからも「入ったら出てこれませんよ」と脅かされた、仙台古本帝国の「萬葉堂鈎取店」へ。そして噂の地下へ。迷路のごとく、入り組んだ広大なフロアでさまようこと1時間半(田中さんは3時間)、4000円近くの買物をして、大満足で地上の日を浴びる。けっこう新書を買ったな。300円で。長尾みのる『お嬢さんチャッカリ旅行』、舟橋聖一『花の素顔』、春山行夫『詩人の手帖』とか、いいところ。アトリエ社版のユーモア全集の、見たことない、弘木丘太『スキー一年生萬歳』も函無し難アリだが、1000円は安い。ぼくが安いというんだから、安いんだ。萬葉堂の社長さんにも御挨拶して、4時半過ぎのやまびこで帰京。
じつは土日きっぷ(JR東日本限定地域、2日間、新幹線含め乗り放題、4回までは指定も取れる)で、日帰りするつもりだったから、翌日、つまり昨日、長野まで新幹線で日帰りしようと、これも指定を取っていたのだ。まあ、これは仕方ない。しかし、この「土日きっぷ」は使えますよ。今度は、長野、上田、軽井沢をぜひ攻めよう。