吹奏楽の請う支援

学習院生涯学習センターでの古本講座、初日。少し余裕を持って家を出る。おおまかな粗筋をたて、資料を揃え臨む。ちょうど、NHKで朝、目白周辺の紹介をしていた。けっこう古い建物が残っている由。一度、もっと早く出て、散歩してみよう。少し早くついたので、目白「ブ」に参拝。10分ほどで、柳瀬尚紀『ノンセンソロギカ』朝日出版社、文庫4冊を拾う。ここは文庫が拾えそうな「ブ」だな。
古本講座の出席者は6人。本来は開講ができない人数だが、最初のことなのでやってほしいと言われ、やることに。40代の男性が3人、あと50代男性、40代女性、70代女性という構成。ちょっと出席者にこちらから聞いてみると、ぼくのこの日誌を読んでくれている人から、自分でネット販売をしている人、同センターの講座のヘビーユーザーで「なんとなく受講した」という人までさまざま。超入門者から、かなり詳しい人までいる。ホワイトボードをなるべく使う。視覚化することでひきつける。ノートを用意して写している人も数名。ノートに取るような話ではないが、板書することでもっともらしくなるのだ。
なんとか90分の授業を終え、男性3人と歩いて高田馬場、地下鉄で早稲田、早稲田青空古本市へ。会場に着いて「ここからは敵だから」と言って、お三人とは別れる。文庫売場で文庫判型の小冊子3冊を拾う。サッポロの喫茶店が出していた雑誌、戦前のキングの付録ほか。古書現世の出品なり。海月書林さんに筑摩書房の女性のための古本屋の取材がいつになるかを聞かれる。そう、早くに取材を申し込んでおきながら、延び延びになっているのだ。あわててあやまる。いかんなあ。
ぼくが会場についたのは1時だったが、まだ大勢の客でにぎわっている。天気もよかったし、古本市らしいにぎわいがあってムードはいい。偶然、明日取材を受ける中日文化センターのSさんと遭遇。「なんとなく、ここでお目にかかれるんじゃないかと思ってました」という。しかし、Sさんも東京出張で、ちゃんと古本市を覗くとは、ほんまもんの好きもんですなあ。
ほんとは、今夜、渋谷の長井邸で落語会があったのだが、どうも芯から疲れて、大勢の人と会っておしゃべりする気力がない。パスして帰宅。初めてのことだから疲れたのだと思わないと、これから4カ所での講座をとてもこなせない。4カ所でやるというと、うれしがってやっているようだが、そんなことはない。自分というキャラクターと仕事を売り込む営業活動であることは否定しないが、その何分の一かは、古本ファンを少しでも増やす布教活動だと、これは本気でそう考えている。若い古本ファン、本好きが増えないと、ぼくのような仕事は先がない。山本善行とも電話でそんなことを話していて、二人で古本布教のときに着るユニフォームを作ろうなどと笑いあう。神父が着るような。
夕食後、ソファで惚けたようにテレビを見る。笑ってこらえて、吹奏楽の請う支援(こうしえん、とうつと、こんなふうになる。阪神ファンのパソコンのくせに、なんちゅうこっちゃ)、「男はつらいよ寅次郎恋やつれ」を見る。「ゆの津」それに吉永小百合登場、の「津和野」の風景が美しい。画面には「ゆの津」と看板その他に映ったが、調べると「温泉津」と書くのですね。ここは行ってみたくなった。「男はつらいよ」を見る、半分以上の魅力はこの日本の風景にある。30年前の、日本全国の風景を美しくとどめていることで、この映画は貴重だ。