おっさんの頬がピンクが染まるとき

「築地まるかじり2006」原稿送付。本文以外のタイトル、リード、小見出し、キャプションなど、すべてこなしたのは久しぶり。最初の編集部で、これらネームの重要さ、徹底して叩き込まれた。本文を読まなくても、それ以外をざっと見るだけで全貌がつかめること。うまくいかず、何度も書き直したものだった。
今晩、妻は一人でスピッツのコンサートへ行く。昼過ぎから娘のお相手、といえば、「ブ」である。朝から花火の音が聞こえていたが、今日は国分寺のお祭り。法被を着た人達、山車を引いて練り歩いているのに出会う。みな誇らし気で上気した顔。
風が強く、自転車を漕ぐのがたいへん。遅れる娘を何度も待ちながら、玉川上水沿いを走る。ざわざわと木々がこすれあって騒ぐ。一ツ橋「ブ」は珍しくてごたえあり。和田誠安西水丸『青豆とうふ』講談社、青木一雄(とんち教室!)『事情と情事』展望社、武田花『煙突やニワトリ』筑摩書房江國香織飯野和好絵『桃子』旬報社など9冊を買う。見つけたらそのつど買って上々堂へ出していた、柴田真紀『僕たちの錆れた心が嘘みたい』角川文庫、は今回、自分のためにキープ。というのも、北杜夫ぼくのおじさん新潮文庫のことを書いたところ、ある人から山崎まどかさんの『ブック・イン・ピンク』晶文社にも紹介されていた、と聞き、読んでみた。つまり、これまで読んでなかったのだ。なにしろ『ブック・イン・ピンク』だし、帯に「乙女は読書でおしゃれする」とあったのに、50間近いおっさんは、ちょっと顔がピンクになって敬遠していたのだ。しかし、まちがっていた。これ、いい本だよ。選球眼という言葉が野球にあるが、山崎さんの「選書眼」がじつにすばらしい。おっさんは、何度もそうかそうかと教わることが大であった。とくに中林洋子『貴女のためのアイディア』が取り上げられて、中林について解説されているのには「あちゃあ!」だった。一時、ぼくは「中林洋子」熱に冒されていたが、この本に取り上げられていることを知らなんだ。おっさんが間違ってました。山崎さん、ごめんなさい。
おっさんが秘かにガンをつけていた柴田真紀『僕たち』も、ちゃんと紹介されていて、「この本で使われている、古い欧米雑誌グラビアをカラーコピーして切り張りしたり着色したりしてそのまんま使い、というCTTPの芸風はその後、『権利問題』とか無粋なことを言う輩が出てきて封印されてしまうので」なんて、知らなかったよ。おっさんも、このグラビアをレイアウトしたデザインワークがおもしろいと思ってたのだ。SF、ミステリーからおっさん文学まで、解説文も正確。おっさんは、何度も手帖に探求書をメモしてしまいました。角川文庫のサリンジャーモラヴィア、アップダイクなどのカバーをデザインした日下弘を「角川レタリング」と命名して取り上げるセンスにはうなりました。
木村衣有子さんの京都本とか、このところ、おっさんははるか年下の女性に教わることばっかりです。もちろん、黙って頭を下げて、ありがたく傾聴するだけです。はい。