『快楽殿』と『悪の紋章』

夕方から竹橋「如水会館」で仕事。はやく家を出て、高円寺「好書会」、神保町「ぐろりや会」と回る。まずは国立「ブ」が単行本500円均一、新書200円均一。単行本は買えず。古書業界を扱った森真沙子『快楽殿』徳間ノベルスがあった。これこれ。坪内氏の紹介によると、ひぐらし書房をモデルにした古書店主が登場するとか。また、神保町古書街へ行くのに、JR「神田」で降りる、というケアレスミスがあるという。ちょっと読んだらほんと、だ。じっさいに神保町へよく行っている人間なら間違いようのないミスだ。あと、平凡社ライブラリー武田久吉尾瀬鬼怒沼』、加藤泰三『霧の山稜』が105円。
高円寺に着いたのは昼過ぎ。なにやら異様な雰囲気。そうか阿波踊りか。道路端はすでにシートを敷いて場所取りをしている人がおおぜいいる。「好書会」では4冊。なかで橋本忍『悪の紋章』朝日新聞300円は、同名タイトルを映画化した際の原作。スチール写真が多数入っている。こないだ、村井淳志『脚本家・橋本忍の世界』集英社新書を第二章まで読んだ。橋本忍を深く愛する著者が、万端調べ挙げ、当人にインタビューしてできた本。著者の橋本への並々ならぬ敬愛ぶりがうかがえるのはいいが、それが行き過ぎて、ひいきの引き倒しになっている感がある。橋本は黒澤明が好んだ脚本家。「羅生門」「生きる」「七人の侍」が名作で、「影武者」や「乱」が壮大な駄作なのは、前者が橋本が関わり、後者が関わっていないからだという。「七人の侍」の脚本もほとんど橋本の手によるもので、黒澤ばかりが称揚されることを憤っている。
いや、映画の出来が脚本に負っていることはわかる。橋本の存在は大きかったろう。しかし、著者の筆は橋本を持ち上げるあまりに逆上している。映画が最終的に監督の手によるものであることは自明だ。その点、この本はどうか。
神保町へ移動、書肆アクセスでフェアをチェック。やはり責任を感じ、売り上げが気になるのだ。畠中さんは、「よく動いてますよお」と言ってくれるが、どうだろうか。店を出たところで、声をかけられた。見ると晩鮭亭さん。あまり時間がなかったが、近くのカフェで少しでもいいから、と誘って話す。もっぱらアン・サリーのこと。ふたりで「いいんだよなあ」「いいですよねえ」とうっとり、平成の歌姫について語る。このあと、如水会館毎日新聞社の仕事。神保町ムックで、大屋書房さんの纐纈クリちゃんと、マドンナ濱野さんを組み合わせて、ぼくが司会で語る女性が見た神保町。女性二人はメイクつき。
リンダリンダリンダ」のことですがね。ギターの恵は、在日三世という隠し設定でしょうね。貸しスタジオで、ソンが韓国語で喋りかけたとき、恵はそれを理解する。答えたのは日本語だけど。韓国語はわかるのだ。それで、恵の家に怪我をした萌が訪ねてきて、家の外で喋り、ちょうど外から帰ってきたおばあさんが「なかに上がってもらえ」と言ったとき、恵がちょっとイヤな顔をした理由も分かる。家のなかに入れば、何気なくそれがわかるからだ。違うかな。もう一回観たくなってきたな。