ちょいとね、サルトルを

青山光二『われらが風狂の師』新潮文庫、700ページもある本だが、読み出すとおもしろく半分ほど読む。旧制三高、京都大学講師の職を捨て、学生に戻った奇人ドイツ哲学者・土岐数馬を描く。これ、土井虎賀寿がモデル。ほか田辺元小林秀雄太宰治野間宏、粟津則雄などは実名で登場。「らんぼう」の美少女・鈴木ユリも登場、すなわち若き日の武田百合子なり。土井は絵も描いた。洲之内徹『気まぐれ美術館』にも、一章を割いて描かれている。家があるのに、弟子、教え子の家を泊まり歩き、平気で借金を重ねる。思い立ったら、すぐ電車に飛び乗り、軽井沢あたりまで行く。むちゃくちゃな人物なり。
午前11時に広尾。6月18日にオープンした「古書 一路」(詳細はHPを)を「彷書月刊」の取材で訪ねる。住宅街の小さなマンションの一室に、カフェと古書の店が。店主堀江一朗さんは、脱サラして始めた。ぼくと同じ1957年生まれ。日本の純文学の王道がびしっと揃っている。話はずんで、昼食を一緒に、広尾駅まで裏路地を散歩する。
午後、少し遅れてサンデー毎日。「古書 一路」の本棚の幻影をまぶたに、帰り「ささま」を襲う。あれこれ7冊、均一狩り。サルトル関係を3冊。
徳「ちょいとね、サルトルを買おうかと思って」
親方「ちょいと、サルトルぅ? ああたぁね、サルトルなんて、ちょいと買うもんじゃありませんよ」
夏だから「船徳」を。ね、おまささん。
サルトル反戦の原理』、F・ジャンソンサルトル』、サルトルボーヴォワールほか『文学は何ができるか』。ほか、柳井乃武夫『感覚的パリ案内』、倉橋由美子『反悲劇』、岡富見子『あざなえる縄』、川崎洋『言葉あそびがたり』。