スクラップブックにつぎつぎと

朝食後、玉川上水沿いを一時間弱あるく。ところどころ土道が雨でぬかるでいる。しかし、草木の匂い、土の匂いがする。午前中に、東京新聞書評、黒岩涙香『噫無情』を書く。新潮文庫の全訳版(第一巻)、鹿島茂『パリの王様たち』、ちくま文庫黒岩涙香集』と、参考図書を揃え、計画的に書く。しかし準備したことの半分も書けなかったなあ。まあ、しかたない。
午後、妻と外出。「くら寿司」で昼食。三鷹上々堂」へ補充に行く。大きな紙袋にびっしり二つ分。しかし、岡崎堂の本を置かせてもらっている棚の、前出ししている奥のストックがいっぱい。あまり売れてないなあ、と言うと、いつもアヤさんが「そんなことない。売れてますよ」と言ってくれる。とにかく補充は大事だ。
帰り、三鷹「ブ」へ寄るが、ここでも携帯片手に背取りしている男がいる。いまや各店に一人は見かけるな。しかし、カゴを覗くと、たいした本は入っていない。どんどん背取りな。ぼくも文庫を始め、数冊買う。ひさしぶりに、魔の「ハレラマ」が店内に流れる。戦慄の旋律である。「ブ」の前の道路のいっぽん裏筋に、グリーンなんとかという商店街がある。ここが、なんともいえない、微妙な雰囲気で、こころ落ちつく。喫茶室を併設した洋菓子店でコーヒーを飲む。クロワッサンがおいしそうだったので注文。これは皮がパリっとして、ジュワッとバターがでてきそうな、おいしいクロワッサンだった。
夕食後、家族でイトーヨーカドーへ。本屋で娘に「小学4年生」を買い、ぼくは「エン・タクシー」を買う。付録の洲之内徹の小説『棗の木の下/砂』が欲しかったからだ。文庫判型というのもいい。これだけで本体定価860円の値打はある。
スクラップブックを買って、このところ貯まった切り抜き記事を整理。今朝の朝日、「論座」広告に、ぼくの名が、永六輔氏の隣に大きく出ていた。最近、続けて永さんからハガキをいただいたばかりなので、縁を感じた。そのほか、丸谷才一「袖のボタン」、倉橋由美子追悼(松浦寿輝)、文芸の風(荻原魚雷登場)、佐伯泰英の時代小説が人気(文庫書下ろしにこだわる)、話題の本棚「古本は招く」(『古本道場』紹介)、毎日新聞の取材記事(角田さんとの写真入り)、幻の「戦線文庫」復刻、「舞姫」モデル エリーゼ「鴎外と手切れ」に異論、成徳大学の助教授が古書市で発見した芥川龍之介の聴講ノート発見などを貼る。
舞姫」モデルに出てくる山崎國紀氏は、立命館大学で教わっている。日本文学史の講義だったが、専門の鴎外、横光利一の話ばかりする。熱心にする。それがおもしろかった。ちょうど横光再評価の時期で、ぼくが横光について発言すると、「そうか、わかっとる奴もいるんだな」と山崎先生が言ったことを覚えている。
向井くんから届いた「未来」7月号は、向井くんの「飯島書店」をまっ先に読む。岩森書店、三茶書房、飯島書店と連鎖する、飯島家の謎がこれで初めてわかった。三茶の故・岩森さんの名前も出てくるが、芥川の聴講ノートの記事にも、やっぱり岩森さんが出てくる。
たった原稿一本書いただけで、本日はあと、やる気なし。ああ、いったいどうなっていくのだろうな、わたしは。