まるでそこだけ江戸時代だった

鈴木地蔵『市井作家列伝』右文書院、昨夜ベッドに持ち込み、今日一日持ち回り読了。めちゃくちゃ、おもしろい。寄贈していただいたのは一カ月以上前。取り上げられているのは、木山捷平小山清川崎長太郎、木下夕爾、小沼丹野口冨士男など、気持ち悪いぐらい、ぼくの好きな作家ばかり。挟みこみの栞で、ナンダロウアヤシゲさんの推薦文(寄せている4人のなかで、身びいきでなく、いちばんよく書けている)を読んで感心し、それでもいままで読まなかったのは、装幀が、「御仏前」というイメージで、手に取るのに、ためらいがあったからだ。つまらないことで遠ざけたぼくがバカだった。私小説という形式を射程に入れ、そこから、作家の人生と作品の関係を広く鋭く読み込んでいく。まずは一級の仕事だと思った。これは、ぜひ感想を著者に送りたい。
今日は、朝雨降って、のち曇り空が重たくたれこめ、傘を持っていくかどうか迷ったがけっきょく持たず。それでよかったのだ。お昼、時事通信発行の教育雑誌で新しい連載を持つため、編集者二人と待ち合わせ、蕎麦屋、ぶらじるで打ち合わせ。一人はよく知っている男性だ。とにかく本について何を書いてもいい。できれば古本で、とこれ以上望むべくことのない条件。喜んで引き受ける。
このあと、アクセスに寄って、畠中さんと20冊選んでコメントつけるイベントの打ち合わせ。帰りぎわ、入り口近くの平台で、INAX出版『肥田せんせいのなにわ学展』を見つけ、うわあ、と心のなかで叫び買う。肥田晧三は、高校中退で関大の図書館司書を勤めていたところ、谷沢永一に認められ、非常勤講師をし、いきなり教授に抜擢された人物。いつも和服、風呂敷姿で通し、ぼくもよく、大阪の古本屋を回っているとき、その姿を目にした。まるで、そこだけ江戸時代、だった。谷沢さんの文章で知っていたから、いつも畏敬の念を持って、拝むように見ていた。身銭を切って、古書あさりをした、その成果がカラー写真で紹介されている。すごい。
湘南堂が50%割引をしていた。重信幸彦『タクシー/モダン東京民俗誌』日本エディタースクール出版部が、1000円の売価。半額で500円。これを買う。一時、よく見たが最近見かけない本の一つ。これは品切れになったら、いっきょ、買いにくくなりそうな本。必携だ。
サンデー毎日の仕事を終え、今朝、朝日新聞古山高麗雄について取材されていた魚雷くんの顔を見にいく。朝日新聞のことを言うと、「まだ、読んでないんですよ」とはにかみながら魚雷くん。
帰り、西荻下車。先日オープンした「にわとり文庫」へ。田辺くんに挨拶し、きゅうきょ取材させてもらう。「彷書月刊」用だ。開店記念に、収集中の清水茂『ヴェラ・イコン』小沢書店を1050円で買う。
家に帰って、やらねばならぬこと頭上に感じながら、夕食後、少し寝る。これが、このところの日課だ。
あ、『古本道場』4刷、決定!です。もう、二度と我が身にこんなこと、おこらないだろうな。