殴られても死なないが

けっきょく、『ラブレター』を途中でやめてベッドに入ったが眠れず。ネコを枕元で遊ばせながら、ひたすら本を読む。プリモ・レーヴィ『アウシュヴィッツは終わらない』を読了。しずかだが、異様な感動をうける。収容所に入った新入りが働きすぎるのを見て、「呼吸から、動作から、思考まで、すべてを節約する、私たちの地獄の底の技術を、彼はまだ学んでいない。殴られるほうがいいことをまだ知らない。普通、殴られても死なないが、疲労は死を招く、それもひどい死を招くからだ」。「朝には、打ち負かすことなど不可能な永遠の一日、と思えた今日も、一刻一刻が過ぎて、穴が開けられてしまった」。生存はつねに奇跡なのだ。
一時間ほど仮眠をとって、TBSへ。雨の高速道路を走るのは、後部座席にすわっていてもイヤなものだ。
朝食会をパスして帰宅。すぐ眠る。午後、週刊文春の書評、嵐山光三郎『古本買い 十八番勝負』を書く。嵐山さんが読むにちがいないと思うと、緊張する。あちこちから電話あり。角田さんとのテレビ出演、「王様のブランチ」は、今月9日の放送になったらしい。ぼくはたぶん見ない。どうも自分の出ているのを見るのがイヤだ。
朝日ベストセラー快読、候補三点が送られてくるが、うち二点は「本」とも呼べないような、スカスカのゴミ本。けっきょく消去法で『頭がいい人、悪い人の仕事術』を選び、メールでそのむね、担当者に伝える。
ブローティガン『西瓜糖の日々』をぱらぱら再読しながら、また寝る。TBSの日は、こうして、一日、使い物にならない。
今江祥智「童話」術』をぱらぱらめくって読んでいると、今江さんが、六十年代、小金井市国立市と住んでいたことがわかる。どちらも、ぼくがよく知るエリアだ。「国立に住んでいたころ、風呂屋にいくとき、となりの古本屋に本をもっていって、帰りにお金もらって、それでおかずを買って帰るということを毎日やってた」と語っている。今江さんは都下国立町東四ノ七に住んでいた事が、図版に掲載されたハガキでわかる。「となりの古本屋」がどこだったか、気になる。
講談社文芸文庫の解説目録を先日、入手。2004年11月、現在。およそ300点が品切れになっているようだ。すべて、ノートに作家別に抜き出してみる。もとがいいだけに、並ぶと壮観。木山捷平井伏鱒二吉田健一花田清輝は、点数も多いが、品切れも多い。現在、流通しているのが500点ぐらい。これが限界なのだ。この品切れ300点を、ぼちぼち拾っていく、あてどない旅に出るか。