薄いオレンジのジャケットを

「お父さん、今日は夏至だって」と娘が夕食どきにいう。「夏至ってなに?」と聞くと、「あのね、昼が一番長くて、夜が短いんだよ」「そうか、ブックオフでいうと、どういうこと?」「……えっと、105円の本がたくさんあって、半額の本が」……しめしめ、だいぶ洗脳されてきておるわい。
昼間、妻がでかけ、一人なので自転車こいで東大和イトーヨーカドーへ。チャリ、停めておいて近くの「古市」へ。文庫、単行本を総チェックして、これだけ本があって、買うものがないというのはどういうことか、と憂えていると、最後の最後に海外文学のコーナーで、フィリップ・ドレルム『しあわせの森をさがして』廣済堂を見つける。525円。これ、探求書リストに入れていた本だ。ドレルムは『ビールの最初の一口』を読んで、気に入った。これは、タイトルだけ見るとゲエ、だけどね、たぶんいい本だと思う。作風はいわばフランスの串田孫一ってところか。
これを持って、イトーヨーカドー大戸屋」で親子丼を食べる。こまっしゃくれた丼で、持って食べにくく、ごはん粒がこぼれてしまう。あの、ぼてっとした、いちばんよくある丸い丼がいちばん、なのだが。kentが値下げしていて、薄いオレンジの麻のジャケットを9800円で買う。「週刊ブックレビュー」用だ。
文春新書の新刊がどさっと、週刊文春の書評用に嵐山光三郎さん『古本買い十八番勝負』集英社新書が、とどく。あ、そうそう青柳いづみこさんからも、新刊『ピアニストが見たピアニスト』白水社が少し前に届いていた。アルゲリッチミケランジェロなど6人のピアニスト論。このところ、本をいただいても礼状が書けなくて、いかんなあ、と思っている。『古本買い十八番勝負』はそれからすぐ、読んじゃった。当然ながらおもしろい。知らないこともたくさん教わった。勝負に挑む五人衆では、石田千さんがいい味だしている。えっ、じつはデビュー前に、あの本にも、この本にも、匿名、変名で石田さん、参加して書いてたんだ。おどろき。
嵐山さんによれば、西荻ゴゴシマヤの主人で「島田雅彦似の美男」がいる、というのだが、今度見にいってみよう。夜はひたすら原稿を書く。