クリーネックスはそのままで

訂正
名古屋で古本の講座を持つ、という話、主宰は名古屋新聞ではなく、中日新聞です。失礼しました。
先週、少しいそがしく、日曜はバーベキューの会、とあわただしく過ぎ、月曜日がまた始まる。朝、朝日の2面だかに、石神井書林、内堀さんのコラムが掲載されていた。5回連載になるはず。先日までは銭湯のことを町田忍さんが書いていた。町田さんのところも、取材でうかがったことがある。終って、追っかけるようにすぐ、お礼のハガキが届き、心遣いの細やかな人だなあ、と思った。ぼくはそこまでできていない。
昨夜、遅くCSで是枝裕和『ワンダフル・ライフ』、今日、夕方から、岩井俊二リリイ・シュシュのすべて』を見る。どっちもおもしろかったなあ。相当ヘビイな内容を、静かな画面でえがくこと。ときに詩的な美しい映像。役者に自然な演技を要求すること。この二つはテーマも印象も違うが、どこか似ている。『ワンダフル・ライフ』の小田えりかがかわいかったなあ。
急にサリンジャーを読み返したくなり、『ナイン・ストーリーズ野崎孝訳、新潮文庫を数編読む。やっぱりおもしろい。で、ぼくの持ってるのは、1971年版だが、ネット検索すると、88年に改訳、とある。集英社文庫からも『九つの物語』中川敏訳が出てる。講談社から単行本で『バナナ魚日和』が沼澤洽治訳が出ていて、ぼくはこれで読んだんだ。カバーは和田誠
それで、改訳版新潮文庫集英社文庫が欲しくなり、そのほか探す本もあり、車で立川羽衣「いとう」へ。どちらも手に入れる。そのほか文庫4冊、ユリイカ田中小実昌の世界」を650円で買う。まだ、持ってなかったんだ。
帰ってから、新旧を比べたけど、改訳ってことはないみたい。ただの改版じゃないかな。新版のカバー袖にはサリンジャーの肖像写真が入っている。訳者あとがきには、著者から条件として、載せてはならぬ、とあったみたいだが。しかし旧版の初版は1974年だが、「クリーネックス」を注なしでそのままにしてある。このとき、もうこのティッシュペーパーのメーカーは訳す必要なかったのかな。「ちり紙を畳んで重ねて箱に収容したもの」なんて注釈はもう、必要なかったわけだ。ただし、30年前、ティッシュペーパーは高く、とくに「クリネックス」は高かったはずだ。そうかオイルショックが1973年で、もうこのとき、テイッシュはたしかに流通していて、クリネックスというメーカーも知られてたか。翻訳家の誰だかが、最初、むかし、このクリネックスがいかなるものかがわからなかった、と書いてたと思うが。
夜、辻征夫『私の現代詩入門』詩の森文庫を読了。立原道造は中野療養所で昭和14年に亡くなる。その結核療養所に、昭和20年代終りに、辻の母が入院していて、中学生の辻少年が通う。大正9年創設のこの療養所は、平成5年まで残っていた。跡地は公務員住宅になっているとか。ちなみに江古田町にある。ただし、練馬の江古田とは別。中野区にも江古田があるのだ。ややこしいねえ。室生犀星が「我が愛する詩人の伝記」に、この亡くなる直前の立原を見舞って、中野療養所を訪ねる場面があります。療養所跡でもいいから、ちょっと行きたくなりますね。
今日は書評の依頼が2本あった。東京新聞週刊文春。仕事がもらえて、よき日であります。
以上、岡崎がお伝えしました。