わしゃ、プータローか!

にわかにいろいろなことが倒れかかってきた。秋に二つの大学の文化講座で数回の講義をすることになり、そのために講義のタイトル、内容を書いて送らねばならない。一つの大学は、あれこれ記述せねばならない用紙が送られてきて、埋めていく。いちばん苦手なことだ。毎日新聞の桐山さんからも、角田さんとの取材日程を決めるメールが矢内さんを通して。月半ばにかけて、いろんな原稿を書かねばならないし、週刊ブックレビューの出演依頼も、今日、舞い込んできた。
午前中、原稿書きでない、あれこれの用事済ませ、昼飯は独り、蕎麦を茹でる。上原隆さんから送られてきた、『雨の日と月曜日は』新潮文庫を、茹で上がるまで読んでいると、序文にあたる「ファイブ・イージー・ピーセス」という文章に、いきなり井上迅くんが出てくる。つまり扉野良人くんだ。「思想の科学」の編集会議に参加していた上野さんは、同じく参加していた井上くんとよく一緒に帰った。まだ井上くんは武蔵美の学生で、卒業制作に「風の辞典」を作っていると上原さんに話す。風にまつわること、全てを入れる、というのだ。そこで上原さんが話したのが……あとは、この本を読んでください。
蕎麦を食べたら、虫がわき、二日前から所沢「彩の国古本まつり」が開かれていることを思いだし、でかける。空は曇っていて、いまにも雨が落ちてきそうだ。「彩の国」の古本市は、とにかく、6階会場は、だだっぴろい会場に、大量の本が集まっている。いつもの調子で見ていると、もう半分ぐらいのところでくたびれてしまう。品揃えが一般客向け、ということもある。
それでも、笑福亭松鶴編『古典 上方落語(上下)』講談社を2冊630円で拾う。岩田豊雄獅子文六)『脚のある巴里風景』は昭和6年の白水社本。阿部金剛が装幀。各ページの下隅に、阿部による女性の脚をデザインしたカットがある。じつにお洒落。これでカバーがあれば、5〜6000円はするところだが、裸本ということもあり1050円。いいや、買っておこう。そのほか、文庫をちょいと。一階にも規模は小さいが、会場があり、ここで『ニューミュージック事典 81』学研、を735円で。これは買物。80年代までのフォーク、ニューミュージック歌手の名鑑であり、写真、年譜、ディスコグラフィ、本などが紹介されている大判の本。めずらしい。
「ブ」も覗いておこうと、跨線橋をわたり、商店街を抜け「ブ」へ。途中、チラシ、ティッシュ配りが大勢いて、うるさい。あやうく「アルバイト・ニュース」を手渡されるところだった。プータローに見えたのか。見えたかもな。「ブ」では、横尾忠則の第一創作集『光る女』水兵社が拾い物。津島佑子『小説のなかの風景』中央公論社川崎賢子の書評集『読む女 書く女』白水社、なんてのも買ってしまう。
電車のなかでは島尾敏雄『出発は遂に訪れず』を読む。