「山の郵便配達」の犬にブルーリボン賞

朝、起きたら雨だった。晴れたら、家族でハイキングでも行くかといっていたが。土曜日、娘の小学校が運動会で、今日、月曜日が振り替え休日だったのだ。ぼくがいちばん早起き。リビングへ行くと、マシロ(ネコ)が、一晩中ひとりぼっちだったので、足元にじゃれついてくる。すっかり家族の一員になったかんじだ。マシロの誕生日は今年の4月2日です。
みんながごそごそ起きて来て、ハイキングは無理だが、秋川のつるつる温泉へ行くかと提案し、決定。昼前に車で出発。途中、砂川「いとう」へ寄る。よくこれで営業を続けているな、というぐらい、いつも客がいない店だ。文庫棚から、山村修『気晴しの発見』新潮文庫200円、小林亜星『軒行灯の女たち』光文社文庫150円。後者はずっと探していたのを、今日、入手。ネット検索すると、すでに誰かがネットで日誌に書いてら。どれどれ、と見ると自分だった。2003年の11月に、この『軒行灯の女たち』を探していると書いてる。日本全国の赤線体験記で、貴重な風俗資料だ。カバー裏の推薦文は吉行淳之介。カバーいらすとは滝田ゆう。どうだ、まいったか、ってな組み合わせだ。これ、ないよ。ウソだと思ったら探してごらん。見つけたら、コメントで報告してください。
雨のなか、山道を「つるつる温泉」へ。平日、雨、とあってガラガラかと思ったら、駐車場はほぼ満杯。車を降りたら硫黄の匂い。娘が「くちゃい。茹でたまごの匂い!」という。温泉地の気分であります。男湯の露天風呂に浸かっていると、つるつる温泉ヘビーユーザーのおせっかいなおじさんが、あれこれ、誰に語りかけるというのでもなく情報を公開している。8時新宿発に乗って、奥多摩の御岳山から日の出山をつたってこの温泉に2時ごろ入り、4時のバスで武蔵五日市へ行くのがコース。日祝には、日の出山の山頂が一杯で、弁当も食べられない。このつるつる温泉も、5月連休には、1時間半待ちとなった、などなど。
細い雨に煙る山並を見ながら、肌にぬるぬるまとわりつく湯に浸かって、そんな話を聞く。すぐ耳もとで、蛙が啼く声が聞こえる。
帰り、青梅「ブ」へ寄る。作品社の紀行アンソロジーシリーズが5、6册。未所持の『長崎』『札幌その他』を。大岡昇平『野火・ハムレット日記』岩波文庫吉本隆明『ハイ・イメージ論1』福武文庫、それに小島信夫アメリカン・ハイスクール』新潮文庫を持っているのに買っちまう。なにしろ見ないからね。この肌色地、緑ライン、栃折久美子デザインの新潮文庫を見ると、捨ててはおけぬ、という感じ。
家へ戻ると、留守電、メール、電話が殺到。その対応に追われる。ただ、呆然。あんなこと、こんなこと、こなしていかねばならないのね。ああ、それなのに、夜はBSフジで中国映画「山の郵便配達」を見てしまう。傷口に沁みるような映画だったなあ。父親と息子、それに犬。この犬にブルーリボン賞だ。