「オオエ」健三郎

このところ、孫の手をばかでかくしたような簡易電気アンマ機で、テレビを見ながら、カタカタやってい
る。これがバカに気持ちいい。ぼくは長らく、肩凝りがなく、肩が凝るというのがどういう状態なのかわからなかったが、まさしく凝るのだ。石膏を流したように固まる。それをほぐすのだ。死んだ父親が凝る人で、よく指圧したり、うつぶせになった背中を踏んだりしたな。
ハルミンさん、永六輔さんの番組(土曜ワイド)に出演決定、文化放送吉田照美やるマンにも呼ばれているとか。いよいよブレイク。美人だしな。いろんな露出の仕方が可能だ。こうなりゃ、やれることはみんなやったほうがいい。
朝早く目覚め、高円寺へ行く事に。着いたのが10時ちょい過ぎ。ご開帳の第一陣つむじ風は過ぎ去ったあと。コクテイル狩野さんに、「古本道場、売れてますねえ。どこへ行っても平積みですよ」と声をかけられる。3刷り、かかるか。
今日も一日で、あちこち合わせ22冊も買ってしまった。ばかだなあ。なにもそんなに買う事は無い。業者じゃないんだから。いいかげんにしておかないとひどい目にあうぞ。もうあってる? そんなわけで文庫はもう書かないよ。さて高円寺。吉行淳之介編『プレイボーイ傑作短編集』集英社は77年の刊だが、雑誌掲載時のものか、各氏のイラストが入っていてかっこいいの。300円。水木しげる妖怪大戦争ポプラ社は子ども向け、裸本で200円。岩波写真文庫の薄っぺらな目録があったぞ、100円。昭和27年の、これも薄い岩波文庫目録、100円。
神保町へ移動。書泉グランデ6F「鉄道書コーナー」を取材予定。そのまえに城南展2日目。遠藤ケイ『東京プレイ地図』ワニの本が100円。これは昭和48年刊。1973年ごろの東京のスケッチ、ルポ。巻末にタレントの店一覧あり。先日、この地下で聞いた荒川さんの講演に刺戟され、高見順『昭和文学盛衰史』を読み返しているのだが、今日も電車のなかで読んできた。すると、城南展に文藝春秋社刊の二冊本の同書が出ていた。見ると500円。2冊で500円だ。これは買い。あとで「ぶらじる」で開けてみると、なんと、これが高見順の献呈署名入り本。なんたることをサンタルチーア……って、昔のギャグね。
タテキンでは、ドイツ文学の飯吉光夫『傷ついた記憶 ベルリン・パリの作家』筑摩、ユリイカ刊『戦後詩人全集 3』を買う。鉄道オタクの巣窟を担当する、書泉グランデ書店員さんの話はおもしろかった。ここには書かないけどね。
国立まで戻ってきて、いちおう「ブ」へ。だって、みんなが行け、行けっていうんだもの(誰か言うてるんですか)。ここでちょっとまたごそごそ買うわけだが、爆弾を拾った。内藤ルネ『幻想西洋人形館』サンリオギフト文庫だ。こりゃ珍しいと家に持ち帰り、妻に報告すると、即「それ、わたしにちょうだい!」という。しぶしぶ手渡し、ネットで検索して椅子から転げ落ちた。なんと、楽天で一件だけひっかかったその値段は、と申しますと、1万2800円! よほど、妻に言って返してもらおうかと思ったくらい。で、そのことを報告すると「いやよ!」のひと言でありました。
娘がこのごろ夕食時に、「自分は古本でいうとどれくらいのレベルか」としつこく聞く。プロかどうか、と問うのだ。「山本のおじちゃんは」「あれはプロ」「お父さんは」「まあ、お父さんもいい線いってる」てな会話を、ハンバーグなんぞを食べながらしている。そのうち、娘がげっぷをする。「オオエ」と言って、
そのあとすぐ「健三郎」と続ける。これ、ぼくが昔から繰り返しやっていたギャグ。「オオエ」がげっぷで、健三郎は口で言う。続けて大江健三郎、だ。これを娘も昔から真似している。「頼むから、それはよそでやらないで」と妻が懇願する。平和な家庭だ。じつは夕食後にも「ブ」へ行くのだが、さすがにもう、それは書かないでおく。あ、アン・タイラー『結婚のアマチュア』はもうすぐ読み終わるが、すっげえ、おもしろいぜ。