ハルミンさん、おめでとう!

一度未明に目覚め、見た夢を反すうし、うつらうつらしているうちにまた眠りに。つぎに起きたら9時を過ぎていた。午前中、本棚の前に積み上げられ、列を成した本を少し整理。階段の壁際へ移動。ついに、収拾がつかなくなってきた。しかし、整理していると、自分の本ながら、古本屋で本を探している気分が味わえる。味わってどうする? という話だが、例えば源氏鶏太『御身』中央公論社なんて本が見つかる。佐野装幀本だ。これは新装版。テレビドラマ化されたための再発だ。樋口可南子と大出俊の抱き合うスチール写真が帯に。少し読むと、弟の過失でできた借金30万円(いまなら300万というところか)を返すため、バージンで恋人もいる姉が、金持ちの年上の男性に6カ月という契約で身を売るという話だ。めちゃくちゃ、やがな。同じ源氏鶏太『万事、お金』毎日新聞社佐野繁次郎。しかも署名本だ。いつのまに買ったのだろう。してみると、やっぱり佐野繁次郎を意識して買っていたことがあったのだ。
柳原良平『船キチ良平と氷川丸』は国文社、日本少年文庫だから子供向けに書かれた本。図書館廃棄本だ。国分寺光図書館で見つけ、いそいそともらってきた。加藤百合『大正の夢の設計家』朝日選書も買ったことを忘れていた。文化学院創設者の西村伊作の評伝。
加藤はこれを出したときまだ24歳、東大大学院の一年生だった。現在は出身校の筑波大の助教授をつとめているようだ。なかをあけると、扉にかわいらしい字で加藤の署名が入っている。ネット検索したが、この本、すでに品切れで、イージーシークでも日本の古本屋でもひっかかってこない。1990年に出た本だが、めずらしいよ、そんなこと。
午後、日の高いうちに家を出る。夜は神保町で、浅生ハルミンさん『私は猫ストーカー』出版を仲間うちで祝う会。車中、ずっと川崎賢子『宝塚というユートピア岩波新書を読む。線を引きながら、読むが、おもしろい。宝塚最初の公演は、1914年、大阪毎日とのタイアップで博覧会の余興として、だった。その博覧会とは「婚礼博覧会」。どんな博覧会や。
途中、荻窪「ささま」、高円寺「好書会」と寄る。「ささま」は少しセーブしたのだが、均一で5冊買えた。青山南2冊、『南の話』毎日新聞社、『小説はゴシップが楽しい』晶文社。柳原敏雄『魚介歳事記』婦人画報社佐野繁次郎装幀。山下洋輔『ドバラダ乱入帖』集英社ローレン・バコール『私一人』文藝春秋社。
高円寺「好書会」では植草甚一『ぼくは散歩と雑学がすき』晶文社は、持ってるけど500円なら買っておこう。奥野他見男『先生様と生徒』成光館500円が珍しい、はじめて見たオクタミ本だ。伊丹十三『ヨーロッパ退屈日記』は新装版(四六判)のほうで150円。ポケット文春版は持ってる。要するに、『女たちよ』や『小説より奇なり』と同じかたちで、出し直したものだ。生島遼一『水中花』岩波書店も150円。コクテイルが150円均一棚を作っていたのだ。学習雑誌「よいこ」は昭和36年の号が315円。たぶん、ぼくが幼児のときに見ていた可能性のある号だ。「太陽」72年12月号は、背の「特集・尾崎士郎・人生劇場」だけ見ていたら手に取らない。ところが、巻頭、「人生劇場」を写真と挿画と文で構成。これが、写真は篠山紀信、絵が横尾忠則というものすごいコンビ。ぜったい買いの号なり。100円。
ハルミンさんの会のことは、モクローセドロー両氏が書いてくれるでしょう。ハルミンさん、よかったね、とだけ言っておこう。
終電ぎりぎりで帰宅すると、上原隆さん『雨にぬれても』幻冬舎文庫と、なぜか永六輔さんからお礼のハガキが届いていた。「コラム拝読 嬉しく ありがたく」と書いてくださっているのだが、なんのことだろう。心当たりがない。しかし、うれしい。