雨の皇居前

朝から雨。バスで国立駅へ。サンデー毎日の日だが、東京駅まで出て、ステーションギャラリーで開催中の「佐野繁次郎展」を観る。雨の平日、午前中とあって空いていた。おかげでゆったりと回ることができた。油絵の号数がどれも大きいのに驚く。絵の具が盛り上げてある個所、布や鉄板を貼った絵もあり、非常に大胆な作品が多い。しかし、やっぱり関心があるのは、デザイン装幀の部門。この最後の部屋がよかった。「銀座百点」表紙が壁に並べられた展示は圧巻。こうして見るとやっぱり欲しくなる。林哲夫さんはけっこう集めていて、スムースのHPで公開している。ぼくも過去に「銀座百点」は古いものから相当量持っていたが、重なる引越しで、ゴミの日に「キネマ旬報」その他雑誌といっしょに捨ててしまった。佐野装幀本は、意識していないが、けっこう持っている。今回展示されていなかったが、犬養道子『お嬢さん放浪記』も傑作だと思う。佐野がデザインをてがけたパピリオのクリーム瓶は盗み出したくなる清楚なフォルム。レンガ屋の灰皿もいいなあ。
カタログ(2000円)を買って、ギャラリーを出る。外は雨。丸の内からビル街を抜け、皇居の濠に沿って毎日新聞社まで歩くことに。皇居の緑が、雨に叩かれて美しい。遅咲きの桜、品種は何だろうか、淡いピンクと濃いピンクの桜がちょうど盛りで花をつけている。平川門前、桜を近景にしてそのバックに毎日新聞社のビルまでも美しく見える。
いつもより早く編集部に着く。机の上に置かれたグラビア色校をチェックし、書評の仕事にとりかかる。当然、いつもより早く仕事も終り、帰り、吉祥寺下車。「ブ」で平凡社コロナブックス『南方熊楠』を拾う。藤井書店では文庫数冊と、平凡社カラー新書『中国やきもの案内』を買うのみ。いずれも105円と100円。
夕刊で丹羽文雄が死去した事を知る。100歳。ぼくはかつて自著で、うっかり丹羽を殺したことがある。「泉下の丹羽文雄も」なんて書いてしまったのだ。そのまま本になってから気づき、編集者がお詫びの手紙を遺族に書いた。ずっとそのこと、気になっていた。ここで改めて御冥福を祈るとともに、お詫びしたいと思う。実業之日本社から中条省平編『三島由紀夫が死んだ日』が届く。今年で没後35年になる。
今晩はすき焼き。腹がくちくなると眠くなり、少し横になる。北海道新聞の書評を忘れていた。あわてて、青山真治『ホテル・クロニクルズ』講談社、を読みはじめるが、これがなかなか難物。今夜は徹夜か。大貫妙子『ピュア・アコースティック』をこのところ、毎日聞いている。「横顔」「突然の贈り物」「若き日の望楼」「風の道」など名曲ぞろい。
あ、彷書月刊の連載も更新されてますから、って、もう書いたかな。どうもいろんなことが重なって、頭が悪くなる。