okatake2018-07-05

4日(水)、午前中にサンデーの原稿をゴール際に押し込み、午後外出。目指すはサンデー編集部での本選び、ではあるが、時間の余裕を見て吉祥寺。吉祥寺美術館で開催中(8日まで)の「江上茂雄 風景日記」を見る。吉祥寺美術館は、存在は知っていたが、初めて。ビルの7階に、こんな瀟酒な美術館があるのか。江上は生涯(101まで生きた)、市井のまったく素人の画家として、風景のみ、クレパス、水彩で描き続けた。すべて、路上で、目の前で風景を仕上げていく「路傍の画家」で、おそらく批評家の眼や画廊主の評価を受けず、ただもくもくと日課として絵を描き続けた。子どもの使うクレパスを、油絵みたいに盛り込んで、塗り重ねてマチエールを作る。その表現力に驚かされる。パンフに使われた、黄色の面(菜の花であろうか)が3分の2を占める「線路際」など、抽象と具象の間を行く、みごとな作品。いい絵だと思った。線を引く、色を塗る、それだけの行為に生きた時間のほとんどを費やした。
小沼丹が「ジュニアそれいゆ」や学習雑誌に、若き日、少年少女小説を書いていた。それらが2分冊で、幻戯書房から『お下げ髪の詩人』『春風コンビお手柄帳』として出る。知らなかった、こんな作品群があったなんて。こういうことができるのは、やはり幻戯書房だ。いいぞ、いいぞ。後者の巻末エッセイが北村薫で、北村は、50年前のNHKラジオ「国語研究」という番組に、小沼丹が出た回の録音テープを持っているという。なんということか。そうか、庄野潤三『つむぎ唄』に出てくる英文科の先生は、小沼がモデルか。たしかに。と教えられました。収録作品解題を読むと、後者の標題作シリーズが掲載された「高校時代」の「略歴」に、「『村のエトランジェ』で芥川賞受賞」とあるそうだ。これは小沼も困ったろう。取ってないからである。両冊とも、金子恵の絵、緒方修一装丁による、涼し気で、キュートな表紙。これはいいものをいただきました。楽しみに読もう。どっちから読もうか。連載当時の挿絵も、ところどころ採録してもらえると、もっとよかった。きれいな、きれいな本です。
南陀楼綾繁『蒐める人』(皓星社)刊行記念トークイベントが京都であります(東京でも画策中)。
sumus』から生まれた本のこと
【京都篇】
 ひたすら集め、しつこく調べ、記録する……。
 南陀楼綾繁の新刊『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』は、
書物同人誌『sumus』掲載のインタビューをまとめたものです。
 刊行を記念して、それぞれ著書を持つ京都在住の3人の同人と、『sumus』について、本について語り合います。
出演
南陀楼綾繁-林 哲夫-山本善行-扉野良人
日時 7月 26 日(木)18:30 開始(18:00 開場)
於メリーゴーランド京都(ギャラリースペース)   
参加費1,000 円
予約mgr-kyoto@globe.ocn.ne.jp
tel/fax:075-352-5408