先日、年に一度か二度、書評の依頼がある媒体の仕事を断ってしまった。書評のプロである以上、いちおう全方位で受け入れるつもりで、ずっとなんでも引き受けてきたが、今回は無理だと思った。知らない若い作家のファンタジー。しかも検索すると、ぼくのまったくあずかりしらないゲーム世界のような筋立てらしい。まったく引っかかりがなく、読むのが苦痛なのが目に見えている。仕事は欲しいが、これは無理だと思って丁重に断った。しかし、なぜぼくのところへ依頼が来たか、まったく見当がつかない。わりあい自社の刊行物で依頼されることが多い媒体ではあるが、それにしてもプロとしては私の敗北であることには変わりない。
一方、季刊「學鐙」の表紙見返し巻頭ページの三冊書評は、二年の予定だったが、連載継続の申し出を受ける。これはありがたい。
来年三月の「新潮講座」大森馬込文学散歩のコースを、地図をにらみながらいろいろ考えるが、けっこう歩かせてしまいそうだ。5、6キロ以内がベストで、なんとかその中に収めたい。「くりから堂」はその日、開いているだろうか。
NHKBSで、クラシック音楽専門のカメラマン木之下晃を追う番組の再放送を途中から見る。いろいろ感心する。世界的に名を知られる人なのに、横浜の昭和40年代に建った古い団地(2DK)に住み、暗室をしつらえ、自分でプリントしている。助手は奥様。10年ほど前に作られた番組で、木之下は2015年に逝去していた。ぼくも木之下が写真を撮った、たとえば小澤征爾の本など、何冊か持っている。「集中力」というキーワードが頭に残る。
12月8日発売、ちくま文庫新刊『古本で見る昭和の生活: ご家庭にあった本』見本が今週中にできあがって来ると連絡あり。うれしい。解説は出久根達郎さん。解説を読むのも楽しみ。ひさしぶりに筑摩書房へ、50冊サインを入れに行くことに。お安い御用。昭和30年代テレビアニメのキャラクターをサインと一緒に描こうか、と考える。