大人の休日パス2日目、朝刊の全国の天気予報を見て、仙台に晴れマーク。仙台へ行く、と決めて朝旅立つ。なにごとも周到に準備しないと気がすまない人にとっては、大ざっぱ過ぎる計画。昼前、仙台。いきなりすごい人に圧倒される。市内を巡るループルバスも超満員。ガイド小冊子を見て、あれ、こんなところあったのかと「東北大学植物園」で下車。満員、立ち客多しのバスで、降りたのはぼく一人。へそまがりもいいところだ。学生食堂みたいなレストランで昼食。セルフだが、定食550円でサラダ、おしんこ、魚の南蛮漬けにメインの揚げ物がついている。隣りのコンビ二で、植物園入場券を買い(不思議なシステム)、それを握って入口へ行ってわかったが無人なのだ。券を挿し込んで、あれはなんというのか、サボテンみたいな棒をぐるりと回し入場するシステム。すぐ鈴があって、動物への挨拶で鳴らすんだそうだが、クマは出ないだろうな。
東北大学植物園は穴場なり。斜面と渓谷の地勢をそのまま生かし、木や草や花をそのまま育成しているダイナミックな地形の植物園。山歩きを疑似体験できる。とうぜんのようにぼく一人なり。あれだけ大量にいた観光客も、仙台まで来て、植物園とは思わないらしい。いいんだ、いいんだ。一時間ぐらいアップダウンを繰り返し、汗びっしょりになる。続いて恒例の宮城県立美術館。カフェでコーヒーを飲みながら一服。マグカップにたっぷりコーヒーが入っていて美味い。息を整えて企画展と常設展を観る。今回、やっぱり常設展の方がおもしろい。最後の方に洲之内コレクションを並べた壁があり、海老原喜之助「ポアソ二エール」の前に立ち、息を呑む。離れがたい、圧倒的な美しさ。この一枚で、宮城県立美術館へ来る意味はある。もちろん松本竣介にもたんのうする。すいません、佐藤忠良コレクションはパスしました。
再びバスの人となり、定禅寺市役所前で降り、ぶらぶら歩いて「火星の庭」へ。カフェ利用客で満席であった。健チャンが一人きりもりしていたが、電話してくれて前野久美子さん登場。ひさしぶりにいろいろ話す。わずか30分ほどなのに、内容の情報量が濃い。すぐスイッチが入り、マエクミワールドになるのには、いつもながら感心する。いろいろ教わった。仙台のバブル的伸張、古本が急速に売れなくなっている、むしろ台湾での日本熱が熱い、牧野伊三夫さん「火星の庭」訪問など盛りだくさん。なるほど、なるほど。
仙台はいつのまにか地下鉄が延伸していた。券売機で(みどりの窓口は100人ぐらい並んでいる)大人の休日パス使用で、グランプラス指定席を取る。大宮までノンストップで、仙台から東京まで1時間半ぐらいとめっぽう早い。仙台駅すし通りの「北辰寿司」は行列。カツサンドとビールのロング缶を買って、車内で飲み食う。
荷物、なりかたちも、いつも中央線の古本屋巡りをするときとまったく変わらない。車内ではずっと島田雅彦の新刊を読んで居た。仙台「ブ」が移転しているのに、気づかなかった。前野さん情報で、青森へ古本旅へ行きたくなる。古ツアさんが「大人の休日」を取得したら、一緒に行こうと約束しているので、がまんだ。次は秋ですよ、秋。
充実した「大人の休日」使い倒しの日々で、編集者はじめ知り合いは呆れているだろうが(どうするつもりです、と)、もうどうなってもいいと思う。私は良寛になるのだ。鞠をついて、子どもと遊んで、老年を過ごすのだ。
ブラタモリ 大宮編」をヨッパライながら見ていたが、だんだん鼻についてきた。「さすがタモリさん」を引き出すための構成になっていて、もういいよと思う。「氷川神社」へ来て、「(ここは)氷川神社ですね」とタモリ、つきそいの教授が「あ、さすが」って、誰でもわかるでしょうに。いや、タモリの該博な知識を貶めるつもりはまったくなく、誰よりも深く感服はするが、それを引き出す手続きが、もう、なんだかとてもウザイ。こんな調子が続くなら、ぼくはもう見ません。この方向性は間違っていると、ここではっきり言っておく。途中で「アド街ック天国 入谷」に切り替える。飯尾和樹(ずん)がなんでも、いっちょかみで口を出すのだが、駄菓子屋の「金花糖」について何かとふられ、絶句したあげく「ぜんぶ、音読みですね」と返したのには、「おおっ」と拍手する。できそうで、できない。テレ東京女子アナも「絞り出しましたねえ」と感心していた。このコメントもいいです。