白仁田恵理礼讃

昼飯を食べながら、かならずと言っていいほど合わせるチャンネルがテレビ東京「昼飯旅」。テレ東京的2軍タレントが、地方の町を歩き、出会った人に「あなたのご飯見せて下さい」と所望し、叶えられると、その家に行って昼飯、夕飯を作るところから撮影し、最終的に一緒に食べる。いかにもテレ東京な低予算、人力のみで成り立つ番組である。後半は番組ADが、カメラをかついで同様のことをするわけだが、いちおうは名と顔の知られたタレントが行くより、ハードルが高くなる。知らない男性、女性がいきなりカメラかついで「ご飯を見せよ」と言うのだから、「なんで、そんなことしないといけないわけ」となる。
このADのなかで注目が、白仁田恵理だ。ちょっと歯が出てるが、わりあい可愛い女性ADで、写真好き、鉄道好きが売りで、独特の空気感を作る。昨日、鉄子AD白仁田の回傑作選が放送され、けっこう熱心に見たが、白仁田恵理についてくわしくなった。故郷は佐世保(通学に使っていた地元松浦鉄道にも乗る)、2015年に九州の短大を出て上京、まだ22歳。中高と囲碁クラブに所属し、アマ3段というから大したものだ。白仁田の特徴は、地方出身の素朴そのままで、押しが弱いこと。見るに見かねて撮影に協力する人も多い。たぶん、おおかたが断られ、「いいよ、うちにおいでよ」と言われる確率は低く、だから、「いいよ」とたまに言われると驚いて「え! いいんですか」となる。溶けてしまいそうな、この「弱さ」がいい。年末から正月にかけて、お笑いタレントがフル回転でテレビに登場し、「いっちょ噛んでやろう」と、ドスをきかせて「おれが、おれが」としゃしゃり出る。リアクションも大きく、騒々しい。そんななかで、白仁田ちゃんを見ると、正月かざりのミカンを見るように、すべての掛けがねが取れて、落ちつくのだ。乗った電鉄は、湘南モノレールフラワー長井線、一畑鉄道、わたらせ鉄道などなど。車内で出会った高校生に声をかける、という鉄道もの定番も、彼女は無理。白い歯を見せて、きょときょとと生まれたばかりの小犬のように車窓を見ている。白仁田ちゃん、いいぞ! と応援したくなるのだ。富士吉田だったか、冷やし中華を初めて食べた、というのも衝撃的であった。長崎は「ちゃんぽん」文化圏で、食べたことがない、というのだ。冷やし中華を初めて食べる女の子を、テレビでわざわざ映し、それを見ているというのも、なんだか凄い体験であった。
昨日、2月20日発売予定の中公文庫『古本道入門』の再校ゲラを、担当編集者Fくんに手渡す。あまり進行の時間の余裕がないので、Fくん、その場で一ページずつ、赤字をチェック。疑問に答えるという作業。新書版が出てからまだ4年だが、情報や状況に変動があり、かなり手を入れることになった。なるべく最新情報を盛り込んだ、決定版となる。どっと疲れた。白仁田ちゃんの傑作選、録画しておくんだった。