ぼくぐらいのライターでも年末進行は押し寄せ、日々、二、三編ずつぐらい、原稿を書く。今日は、午前にようやく「古通」の連載原稿を。樽見さんから電話をもらって、締め切りが早まってると知り、手持ちのネタで急いで書いたのだ。いさかか旧聞になるが、10月、南田中図書館の古ツアさんトークの話と、その足で向かった、あれ駅名が出てこない、そうそう「保谷」の「アカシア書店」について書く。店についてはほんの少しになってしまった。ごめんなさい。
午後は、盛林堂小野くんが車で拙宅まで来てくれて、玄関に積んだ古本箱7〜8箱を積んで、一緒に助手席に乗って西荻へ。ついでにうわさの「トマソン社」古本部の前まで行ってもらう。店は閉まっていた。日曜だけ開ける方針のようだ。コンクリート床が底冷えする銀盛会館で、小野くんが周到に準備してくれた棚に本を詰めていく。某所の古本市の出戻り品で、値段を半額から三分の一ぐらいに、ガンガン書き換えて棚に並べる。それに詩集を大量投入する。二時間ほどの作業だが、途中から頭がまったく働かなくなる。脳の伝達系統が、どこかで滞っている感じか。
昨日は、2本原稿を書き、いくつかゲラを見て返し、各種イベントの準備をする。12月、ちょっとイベントやり過ぎだろうと思う。もう何がなんだかわからなくなりつつある。体力の消耗激しく、毎冬そうなるように咳が止まらなくなる。こうして死ぬこともあるかしら。夜は、久々に牧野伊三夫宅におよばれ。春以来か。「もう忘れられたかと思ってましたよ」と牧野さんにイヤミを言うと、間をおいて「忘れるわけないじゃないですか」と笑う。
今週、10日が銀盛会館イベントで、11日が高円寺「抱瓶」でエンテツさんの出版記念会。60人以上が集まるという。人徳である。「四月と十月」が主催で、総合プロデューサーが牧野さんで、主催後援が「港の人」の上野さん。ぼくは、牧野組のなぜか座付きギター弾き歌うたい、という役目になってしまい、この夜も替え歌でエンテツさんを寿ぐことになっている。その打ち合わせに集まったのだ。ハム、ポテトサラダを中心にした前菜の小皿に、あれはイワシかしら、青い葉っぱを敷いた刺し身を芥子醤油で食べる乙、七輪に土鍋をかけて大量のおでん、と牧野亭の食事は料亭並みの出来映え。おでんの具を串に差して、タテに突っ込んでいるのはアイデアで、たくさん煮込めるし、取りやすい。なるほどなあ。はんぺんとちくわぶ(関西ではおでんに入れない)を初めて美味いと思う。
「大人のごはん」を編集する室谷さん、牧野組スタッフでデザイナーでギタリストの青木くん(とは音楽の話をじっくりした。素晴らしい青年)、それに日田市から観光協会の人も見え、さやか牧野夫人のかいがいしくも手篤いもてなしに酔いしれる。しかし、疲れがひどく、途中から海の底へ沈んでいくような感じであった。また牧野邸にスマホを忘れた。これで二度目。忘れ物が多すぎる。先日は、やかんを火にかけて、そのまま放置し、原稿を書いていたら、空焚きになっていた。家内に叱られる。柳宗理のやかん、だそうである。真黒になったが、ススを落としたら、なんとか使えそう。
原書房から著者本と印税相殺買い入れ分の『気がついたら本ばかり読んでいた』が届く。なでさすって、力を得る。本の神様、なにとぞ、年末を乗り切らせてください。