昨日の「女流奔流」、聴きながらメモしていた。独占するのはもったいないので、おもしろかった話をいくつかご紹介しておく。
おんちみどりさんは、18ぐらいの時、「つげ義春研究会」の告知で新宿へ。みな初対面同士らしき人々がそこに集まっていて(林静一もいた)、そこからバスに乗って群馬の温泉へ。つげ義春が来るかもしれない、という期待があったが、来ず、高野さんが、つげからあずかった手紙をコピーしてみなに配った。そこに「旅は一人でするものです」なんて書かれていた。「ゲンセンカン主人」のモデルとなった宿(ただし新館)に泊まったという。
おんちさんは、「ガロ」へ原稿を持ち込んでいる。しかし「自動手記ふうに描いてるんですか?」みたいなことを言われボツ。ショックを受けて、あの青林堂の急な階段からころげ落ちたという。
高野さんによれば、1970年代初頭、京都「京都書院」ギャラリーで林静一展が開かれ(うらたさんはそれを見ている)、そこで販売するため、ハガキ大くらいの美人画を10点、新たに林の手により描き下ろし一枚500円で出品したが、一枚も売れなかったという! まだ林静一の名がそれほど知られていなかったということか。林静一は、一ページ8コマあるとして、7コマ目で失敗すると、その一ページを破り捨て、また一から描き直すタイプ。過去の作品に関心がなく、次へ次へと新しいことを求めていく。
早川義夫の早川書店は武蔵新城にあったが、おんちさんは、わざわざ出かけて、早川が自分の好きな本で作った早川コーナーから「夜行」を買っている。早川書店書皮は、最初つげ、のち藤原マキの絵がデザインされていた。早川義夫つげ義春を好きすぎて、自分では会えない。書皮の絵も、早川夫人が取りに行ったという。だから、早川はつげに会っていない(はず)。
うらたさんは、高野さん制作、つげ原作、山下敦弘監督「リアリズムの宿」撮影現場に、取材で出かけた。それが「夜行」に掲載された。ギャラが払えないというので、高野さんは、うらたさん、山下監督を京都・円山公園の名料亭「長楽館」に招待した。コーヒー一杯が800円するような店だ。なんでも好きなものを食べて下さいということであったが、山下は「ぼく、カレーライスが好きなので、カレーライス」と言って、いちばん安いメニューのカレーライスを注文、うらたさんもそれに倣った。「山下監督、いい人なのよお」とうらたさんはカンゲキしていた。
以上、聞き違えや、メモの書き違いがあるかもしれないが、大きくは違っていないと思う。もったいないので、おすそわけ。