おとなしく家にいて、ヨムヨムの日。帚木蓬生『受難』をなんとか読了。そうなるとわかっていても、細部の手ほどきが緻密で、読ませてしまう。新潮文庫に入ったとは知らなかった、東映プロデューサー日下部五朗の『シネマの極道』、めちゃくちゃ面白かった。あれ、単行本でも読んでるぞ、と気づいたが、それでも読んでしまう。「極道」という名にふさわしい、元気のあった映画界の実態、エピソードが生き生きと描かれる。まったく、退屈しない読書であった。マキノ光雄は、原節子にも「節ちゃん、いつになったら、やらせてくれるんだよ」などとカマす。岡田茂は、「誰が為に鐘は鳴る」を見て感激、日下部に「お、そうや、『博打の町に鐘が鳴る』ちう映画はどうや!」と言った。面白過ぎる。
夏葉社の新刊は、前川恒雄『移動図書館ひまわり号』。ぼくは一時期、トークでも、人に会っても、この本の話ばかりしていた。現役時代の日下部が読めば、「これ、ええシャシンになりまっせ!」と言いそうな、感動の名作。島田くんは、ぼくのブログでその存在を知った由。しかし、これが復刊されるとは、思わなかった。「図書館」とタイトルにつくと、読者が限定されそうだが、いやいや、これは「プロジェクトX」「忠臣蔵」「七人の侍」「ここに泉あり」に連なる、どん底から、チームで革命を起こす、すばらしい話なのだ。ぼくは「ひまわり号」と呟くだけで、目に涙がにじむ。
夜、EテレのN饗の番組で、尾高忠明指揮の、武満徹「波の盆」を聞き、そのロマンチックな旋律に酒がすすむ。チック・コリア小曽根真によるモーツァルトも面白かったなあ。録画しておいてよかった。