14日はいちにち、冷たい雨。夕方きゅうきょ、西荻へ。ライブバー「CLOPCLOP」にて、「トリオねじ×坂田明」ライブを聴く。港の人・上野夫妻、牧野夫妻とご一緒。3月28日「鎌倉芸術会館」での、「牧野伊三夫著『僕は、太陽をのむ』出版記念イベント」で坂田明さんと牧野さんの「音楽と絵の即興イベント」が開かれ、その司会をすることになり、顔合わせのため出かけ、坂田明さんに挨拶。
加藤崇之(g)かわいしのぶ(b)藤掛正隆(dr)の3人による「トリオねじ」は「三者三様の個性が奇妙に絡まった爆裂インストゥルメンタルを中心に、かわいしのぶによる脱力(それでいて強烈)なヴォーカル」のジャズ・トリオ。非常にアバンギャルドな掛け合いのフリー演奏に、坂田さんのサックスが炸裂しながらからむ刺激的な二時間であった。ときどき楽器を置いて、「石巻!」「郵便局はどこですか!」「荻窪警察署」「ご不要なものがあれば回収します」など、突発的なフレーズを絶叫する坂田さん。これがユーモアを生む。
坂田さんは演奏が終わると、われらがテーブルに顔を出され、そこで少し話をさせてもらった。いまでも海外へ、しょっちゅう演奏旅行へ出かけているそうだ。当日のこと、少し打ち合わせする。こうして顔を合わせ、言葉を交わすことで、当日の緊張が和らぐ。
店を出るとまだ雨で、牧野夫妻と、駅路地裏の台湾料理店「珍味亭」(ぼくは初めて)でまた食べ飲む。車中ではずっと吉田秀和を読んでいた。音楽はまず古典から聴くことを始めよ、と吉田は言う。「これらの音楽を大ざっぱでなく、より正確にきく力を養い、そうしてまるで深呼吸でもするみたいに自分の中に深く吸いこむことを通じて、一歩一歩、音楽の核心に近づく努力をすることです」。