昨日、晴天。午後、赤坂へ。坂の多い町。青山一丁目から歩く。「サンデー毎日 昭和のテレビ」の取材で、岡田可愛さんに会う。いかにも芸名みたいだが、これが本名。毎回そう思うが、かつて自分が子どもだった頃、よくブラウン管に中に見ていたスターが目の前にいるというのが、フシギ。
仕事を無事終え、銀座へ。この日から「松屋銀座」で古書市。普通のデパート展とは、かなり並ぶものが違う。ショーウィンドウに入れられたもの、壁に展示即売されたものが目につく。あと和本。洋絵本など。紙ものも多い。日月堂、徳尾、丸三各氏(みな正装)と言葉を交わす。いちばん面白かったのは日月堂さんか。ずらり切手のスクラップ帳が30冊ほど並び、いずれも外国切手が分類されている。未使用のものは高く、使用済みは1000円以下。しかしスタンプの面白さを考えると、後者の方が面白い。あとデザインで値が変わるとのこと。さまざまな紙もの小物を入れた箱をひっくり返すが飽きない。戦後の食糧きっぷ数種(万事配給制で、これがないと当時食糧が手荷入らなかった)、たばこ空き箱「ひかり」(鉄道開通八十周年記念)を買う。昭和13年「従軍手帖」には、歩兵第三旅団司令部附の某氏名刺が挟まっていた。これが500円。
徳尾書店もマンガ中心におもしろいものが膨大に出ていた。某漫画家(ぼくには誰かわかったし、徳尾くんにも確認した)お手製の、雑誌などからの切り抜きを簡易製本したものがずらり。マメなんだなあ、某氏。永島慎二「ニッポン Gメン星方行助の冒険より」は、貸本誌「Gメン」(東京トップ社)掲載の永島の部分だけ切り抜いたもの。描線がきれいで、絵が惚れ惚れするほど巧い。これが300円か。
あと、五十嵐書店から、「昭和五年十月一日 改正汽車時間表」を1000円で買う。100ページ以下と薄い。昭和五年、東京から下関まで直通の急行があって、午後8時25分に発ち、下関に着くのは翌日夜の8時15分。丸々いちにちかかった計算になる。映画「張込み」冒頭シーンを思い出す。
レジで勘定してもらう時、さすが銀座のデパートと思ったのは、包装を二重にするバカていねいさで、値段を剥がすのも、きわめて慎重。100グラム千円の松坂肉を買ったような包装。「ビニール袋を閉じてあるテープが、本にくっつかないようにするのに気を遣う」と店員はおっしゃっていた。最後は瀟酒なデザインの紙袋に入れてくれた。道ゆく人は、この紙袋を見て、よもや中に古本(昭和五年の時刻表)が入っているとは思わないだろう。というわけなのですよ、長谷川くん。
出ると夕暮れ。カメラを持っていたので、銀座の夕景、服部時計店三越のライオンなどを、アジアからの旅行者のような顔をして撮影する。