宝くじが当ったら

ようやく冬らしい季節の到来か。寒空のなか、持てる力を費やして仕事をこなし、午後、妻と車で西荻へ。顔を見合わせない分、容易に車内で大事な話ができることを教わったのは山田洋次の映画だ。宝くじが当ったら、というような馬鹿げた話で盛りあがる。他人には洩らさない。西荻で古い平屋住宅を買って、適当な店舗物件で古本屋を始める。蔵書は惜しみなく、すべて売りものにする。春、夏、秋は休暇を取り、「大人の休日パス」を存分に使って日本のあちこちへ行く。7億円当れば、それが可能になる。希望はしばしば妄想となり、薄い期待はチリと化す。
音羽館、盛林堂で所用を済ませ、QBで散髪。音羽館で、江森國友『「海港」派の青春 詩人・北村初雄』(以文社)を600円で買う。「海港」は、震災前のヨコハマで、若き詩人三人が合同で出した詩集名。北村は25歳で死んだ夭折の詩人。本書カバー絵は、日本のファーブル熊田千佳慕だが、じつは熊田精華という名で、「海港」の詩人でもあった人物の弟に当る。千佳慕に関心を持ったとき、その関連で「海港」も頭にプリントされたのだ。それでこの一冊が買えた。ほか、松田奈緒子『重版出来3』など。盛林堂では、清水崑カバーの志ん生『びんぼう自慢』を。小野くんには、また過分なお世話をかけることになった。申しわけない。年下の友人に、こんなに甘えていいものかと、思う。
帰宅してすぐ仕事。「サン毎」の10本、それに某紙の匿名コラムを書いて送付。書評用の本、原田宗典メメント・モリ』(新潮社)届く。年の瀬へ向けて、時間が加速していく。明日4日は、国立「ビブリオ」で、クリスマス忘年会を兼ねた「第五回 中川フォーク・ジャンボリー」。ゲストが村上律さん。まだ当日席あり。迷っている方、わだかまっている方、日常からしばし脱出したい方、憂さを晴らしに、おでかけ下さい。