午後、池袋へ。劇団「昴」公演「リア王」を、知り合いのMさんのご好意で招待で見せてもらう。考えたら、舞台でシェイクスピアを見るのはこれが初めてかもしれない。「昴」の前身は「雲」。したがって、福田恆存訳のシェイクスピア。ただし、原作を刈り込んで、3時間弱にまとめている。「昴」は、ベテランと中堅と新人のバランスがいい劇団。実力揃いで安心して見ていられる。けれんのない、正統的なシェイクスピアを堪能する。リア王役の金子由之の力強いセリフ回し、コーデリア役の槙野萌美の可憐が強く印象に残った(ぼくはファンになった)。客席は満員御礼。劇団関係者(いかにも役者)らしき人もちらほら。「あうるすぽっと」は、それほど大きな劇場ではないが、これぐらいが役者の顔もよく見えて、鑑賞しやすい。舞台は、張られた大きな布を巧みに、場面場面で応用して三角にしたり、嵐に見立てたりと描き分け、ホリゾントなどより効果を上げている。大道具といえば、傾斜のついたステージ上の大きな台だけ。まことにシンプルながら、この台が分割されたり、回されて、別の方向を客席に見えたり活躍する。「リア王」は、なんといっても、いろんなバージョンで観客はよく知るところのストーリーだから、何もゴテゴテと舞台を飾る必要はないわけだ。その分、役者の演技に観客は集中できる。事実、だれた時間がまったくない。道化役の西本裕行が、寝転んだり、客席に下りたり、自在に動いて重くなりがちな舞台にアクセントをつけていた。パンフレットを読むと、アニメ「ムーミン」でスナフキン役の声優を務めたという。ほんとだ、この声はスナフキンだ。ほかにも、声優で活躍している団員が多い。知らず知らず「昴」の人たちの声を耳にしているかもしれない、と思う。帰りの電車で、岩波文庫版、旧訳の『リア王』でセリフを確認。たまには演劇も見ないと。
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