たぶん関西在住時代に古本屋で買った、現代詩文庫『石原吉郎詩集』をぱらぱら読んでいて、最後の見返しを見ると、エンピツ書きで250(円)とある。定価は320円。70円しか引いていない。つまり、新刊で買えば、当時はもっと定価は上がっている(たとえば500円とか)から、250円としたのだろう。それを買った。高いと思わなかったということだ。これが30年以上前の、古本屋の値付けだった。
現代詩文庫は糸とじがしてあって、非常に開きやすい。そして頑丈だ。読みやすい。
先日、高円寺の即売会に、中野重治全集(旧の室生犀星題字じゃない方、新しい方)がバラで、そうだなあ、10冊以上出ていて、状態もよくて、まあ最近のことだから一冊1000円、ひょっとして800円と、中を抜いて値段を見たら200円。ほかも200円。中は線引きも汚れも痛みもなく、非常にきれい。ううん、としばらく声も出なかった。安い本ばっかり喜んで買ってる奴が、いまさら、何をカマトトぶっていると抗議されそうだが、それはそうなんだが、やっぱりちょっと驚いたのだ。

石原吉郎「決着」
「弓なりのかたちに/追いつめておいて/そのまま手を引いた/そのままの姿勢で/決着はやってくる/来たときはもう/肩をならべている/肩をならべて/だまってあるいている(後略)」