okatake2014-04-26

『神戸70s青春古書街図』の著者・野村恒彦さんがリアイアされ、旧海文堂近くで、古本屋「うみねこ堂書林」を始められたことを「空犬通信」で知る。住所を打ち込んで、ストリートビューで見ると、海文堂が閉める少し前に訪れたとき、昼を食べた食堂「ひさご」の隣りであることを知る。喫茶店らしき店であったが。二階にジャズ喫茶もある。「ひさご」でトンカツ定食を食べながら、こういう場所に古本屋があれば、と思っていたのだ。隣りが定食屋で、二階にジャズ喫茶がある、というのがいい。
昨日は高円寺「藍書店」経由、午後からのっそりと「書窓展」へ。 「藍」では中井英夫『続黒鳥館戦後日記 西荻窪の青春』ほかを。1948年8月29日に「西荻だの荻窪だのは、非常につまらないところなのである」と若き中井が書いている。
「書窓」では、「あきつ」で、箱根のマンガによる観光案内の蛇腹本、それに背が半分取れて700円と安かった、由利聖子の「少女微笑小説」『続チビ君物語』などを買う。帰ろうと、御茶ノ水駅前交差点まで来たら、北條くんにバッタリ。これから「ヒナタ屋」で西秋くん、左岸洋子さんと打ち合わせ、と聞いて、合流することに。西秋くん、古本屋の未来に悲観的。本がとめどもなく安くなる。「この先、もっと底が抜けるときが来ます」と言う。こないだ、五反田「本の散歩展」で、文学全集が積み上げられ、萩原朔太郎全集が、あれは全何巻か、1500円で売られているのを見て、腰が抜けそうになったものだが、底が抜けるとは驚いた。
吉田修一『さよなら渓谷』を、「ビッグ・イシュー」で取り上げることにして読了。すぐ原稿も書く。映画の弱いところも、それから優れているところも、原作を読むことでよくわかった。いや、しかしこの原作をよく咀嚼して、よく映画化したものだと感心もした。冬の海辺の町を、さすらう二人の道行きシーンは、原作では描けなかったところで、映画ではそこが強く印象に残った。大森南朋が妻の鶴田真由(最後まで鶴田真由だとわからなかった)と和解するシーンは、ぼくは映画で、そこまでやることないと思ったが、原作では、主演の二人と同じ比重で、大森扮する雑誌記者の生活と過去が描き込まれている。これは原作を読んで、もう一度映画を観たら、もっとおもしろくなりそうだと思った。優れた小説だと思った。