てなもんや三度笠

昨日は筑摩書房のAさんと渋谷「古書サンエー」で待ち合わせ。
澤田隆治さんを訪ね、取材。2時間ノンストップで、話をうかがう。堺正章・駿二の話は少しだけ。あとはえんえん笑芸の話、テレビ演出の話。80歳とは思えぬパワーで圧倒される。また、その話がおもしろいこと。鴨下さんに続き、ぼくが子どもの頃から見ていたテレビの、代表的な演出家に話を聞けること。この仕事に就いてよかったなあ、と思うのであった。
ぼくが「スムース」で書いていた香川登志緒の原稿も、ずっと気にとめてくださっていて、「続き、書かないの?」と言われる。書きたいのはやまやまなれど。いま、聞いておかないと、関係者や近くにいた人が亡くなってしまうとも思うのだが。
澤田さん、上方笑芸の映像も資料も相当持っておられる。そのために部屋も借りておられるそう。以前に3万冊を某所に寄贈した、というが、それでもまだ。「てなもんや三度笠」の台本を一部合本にして並べた部屋も見せてもらう。少し見せてもらったら、台本には澤田さんの鉛筆文字で細かな指示が書き込まれている。「てなもんや」が映像化されているのはごく一部だけで、この台本、そしてファイルされた写真(澤田さんが資料として撮影しておられた)など、うまく本にならないか。「てなもんや三度笠」全集。

見てもらったら分かる通り、これ、ABCホールの公開録画だったが、立木も下の砂も本物。ふつう、こうした喜劇は書き割りでやるものだが、澤田演出は本物にこだわった。総予算200万のうち50万をこれら装置に使ったという。木や草は出入りの植木屋の職人が手がけた。考えたら、下は板の舞台に、樹を立たせるのは大変なこと。すべて、植え終わったあと、その職人の親方が、本番直前に、口に水をふくんできりふきのように、樹々に吹きかけたという。それで、生き生きとして見えた。「これは名人芸で、みんな感心してました」と澤田さん。枯葉も袋に集めて来て、本物をばらまいた。こんな、すごい話がいっぱい。