okatake2012-09-24

雨さって、秋晴れ。しかし、気温は30度近くになるそうだ。
名古屋のニューウェーブ古書店として気を吐く「シマウマ書房」さんが本を送ってくれた。シマウマ書房の刊だ。八木幹夫『余白の時間 辻征夫さんとの時間』。
現代詩文庫にも収まっている詩人の八木さんが、ずっと交遊のあった詩人ともだちの辻征夫(辻のしんにょうの点は二つ)について、2010年にシマウマで講演。その筆記録に手を入れて一冊にしたのがこの本。
辻の人となりを伝えながら、作品を引用し、辻の詩について深い読みで解説していく。辻といえば「ユーモアのあるライト・ヴァース」と、自販機でがちゃがちゃころんと、出すみたいに書くが、八木は柔らかに反論。広範な知識を持ち、自分に厳しい人、だったという。
時代小説をよく読んでいて、それを詩に生かして発表した作品は、みんなを面喰らわせたが、いや、じつにいい。随所に辻作品が引用されているのもありがたい。辻は都営住宅の管理をする仕事をしていたようだが、ときに孤独死した老人の死体処理などもしたらしい。夫婦ゲンカもしたことがない、と夫人。このバランス。
講演筆記録ながら、じゅうぶん手が入っているのだろう、無駄がなく、じつに読みやすい。新書サイズで手に持つと好ましい軽さ、あるいは重さ。
出したい本はつべこべ言わずに自分で出す。出版不況といって下を向いてツバを吐く時代に、着々と上を向いて歩く一人版元たちがある。たのもしい。「これでいいのだ」。