昨晩、後編を見られなかったのだが、NHKの山田洋次特番、一昨日の前編を見た。「男はつらいよ」記念館の「とらや」セットを模したブースで、吉永小百合山田洋次。「男はつらいよ」はB級喜劇という扱いだったので、女優は超一流のひとに出てもらいたいと思っていたと山田。吉永小百合が松竹撮影所にやってくるという日は、撮影所全体が興奮し、華やいだという。「同胞(はらから)」に出演した松尾町青年部の面々は、ほとんどが、実際に町で暮らす青年たちで素人だった。方言指導で来てもらって、いろいろ話をしていたところ、これは役者さんたちより魅力的で、そのまま本人たちに出てもらったほうがいい、と山田は考えた。
そのうちの5名ほどが、松尾町を訪ねた山田と倍賞千恵子と再会する。これはいいものを見た。「家族」で大阪駅地下道のシーンは、盗み撮りのような撮影をしたというのも興味深い。井川比佐志、倍賞、笠智衆らが、普通に地下道をうろついて、山田が手の台本を高く上げたら撮影開始の合図で、ジャンパーに隠していた小型カメラを出し、照明も同様にして、撮影が始まるといったふうだった。東京で幼子を病気で失ったとき、死亡証明書をもらうため、井川が役所へ行くが、このとき応対した戸籍係は、これも本物の、実際戸籍係をしている男性。井川比佐志が、喜怒哀楽の表し方において、じつにいい俳優だと実感した。
梶井サンポの続き。梶井下宿跡のあった植木坂から分かれる鼠坂という坂があるが、これは、鴎外の怪談ふう短編「鼠坂」とはまた別。「小日向から音羽へ降りる鼠坂」とある。そうか、光文社からちょっとミナミへ歩いたところだ。今度、踏破してみよう。ちょうど、ちくま日本文学全集森鴎外」の巻を読んでいたので機縁を感じた。同書の冒頭「大発見」は、西洋人が鼻をほじるかどうかを、全編にわたって論じたユーモア小説。こういうのも書いていたんですね。