岸部シロー「ブ」にやられる

信天翁で、北條くんから聞いたネタ。「ミヤネ屋」の企画で、岸部四郎の蔵書(吉田健一著作集全揃いを含む)が、風水の芸人によりブックオフへ売り飛ばされたという。そのニュースをみつけました。
http://www.j-cast.com/2011/01/28086776.html
風水芸人の古い本には古い知識しかない、というのも間違っているし、岸部がヨシケン著作集を15万円の価値、というのも間違っているし、それをブックオフへ売るのも間違っている。どこをどう取っても筋が通らないのだから、憤ってもしかたない。ただ岸部を痛めつけて喜ぶという「いじめ」企画だ。しかし、買値は一冊20円か。こうなると、どこの「ブ」へ売ったかが気になるが、105円で店頭に出ることはないだろう。書肆紅屋さんなら、もうつきとめているかもしれない。
昨日はレンタルDVDで、「隣りの八重ちゃん」を、今日は清水宏「信子」を観る。どちらも松竹作品だが、前者は蒲田、後者は大船だ。どちらも軽妙でユーモアもあり、いい感じ。楽しんで観た。「信子」は九州弁のなおらない新米女子校教師・信子を高峰三枝子。これがまたきれいなんだ。金持ちの娘で何かと問題のあるケイコという女生徒を、みんな腫れ物に触るように接しているが、若い信子が正面からぶつかり、感化させる姿を描く。同僚とあんみつをお代わりして食べたことを、目撃したケイコが寮の黒板にいたずら書きする。ここいらは、「坊っちゃん」と同じ。学園ものは、ほとんど「坊っちゃん」の影響下にあることがわかる。
黒い函に入った新潮の世界詩人全集がぼくは好きなんだが、アメリカ・イギリス編のウィリアム・カーロス・ウィリアムスの「ちょっとね」という詩がいい。訳は鍵谷幸信
「僕は/アイスボックス/にあった桃/を食べてしまった
 で それは/きっとお前が/朝食のために/とっておいたんだろう
 すまない/桃は甘く/すごくうまく/すごく冷たかったよ」