『昔日の客』が届きました。

okatake2010-09-28

夏葉社から関口良雄『昔日の客』をいただきました。なんともたたずまいのいい、なでさすりたいような本です。さっそく、珈琲を煎れて、リビングのソファに寝転んで読み始めたら、最後まで読んじゃった。いい秋の午後の時間でした。こんなにのんびりして生きていていいのかしらん、ともちょっと思ったが。
山王書房・関口さんの人間的魅力が、そのまま文章に表れている。酔うと、すぐ歌を唱い出して、踊り出すというところは、息子の直人さんに受け継がれているなあ。尾崎一雄尾崎士郎上林暁の回想もいいが、なんでもない、お客さんとのやりとりがいい感じ。古書価のこともちゃんと書いてある。関口さんは、私小説が好きなんだが、それが文章にも乗り移って、古きよき時代の私小説の味がする。水のようないい文章だ。
石神井・内堀さんから、先日の西荻ブックマークの礼状がとどき、これもいい手紙だった。『昔日の客』にはさんでおこう。
夏葉社のすごいところはたくさんあるが、二冊目となるこの本の最後のページ、あるいは裏帯に、ふつうなら既刊の『レンブラントの帽子』を入れたくなるところだが、それをしなかった。潔いというか潔癖というか。でも、正直なところ、そういう宣伝がないほうがいいんだよなあ。だから、ぼくらで勝手に宣伝しなくちゃ。
明治文学をこのところ、ずっと読んだり、調べたりしていて、斎藤茂吉のことあれこれ。

茶店で田村さんと話していて、教わったこと、一つ思い出した。田村さんは、古本屋は誰でもやれる仕事で、最後に選ぶ職業でもある、というようなことを言い、以下、ちょっと書くのをはばかるコトバが続き、だから片腕の古本屋もいたらしい。市場では片腕で入札し、片腕でポンポンと本の荷さばきをしたという。