中学の時イケてないグループに属していた

先日、アメトークで「中学の時イケてないグループに属していた芸人」を見て、笑いながら衝撃を受ける。中3のとき、顕著だったが、ぼくも明らかに「中学の時イケてないグループ」に属していた。中学は3回変わったが、中2のとき、クラス委員長をやって、それほどでもないと思っていが、中3になって転校した学校は、新設一年目で、ぼく以外は、みな同じ地域の小中を一緒に過ごした者たちで、不良が多かった。あとはスポーツ部に所属する者たち、頭のいい者たちと分かれていた。ぼくは転校そうそう、不良グループにトイレでかつあげにあった。ぼくのクラスの同じ班(授業も机をくっつけて班で受ける)にいた美少女Mが、他クラスの不良のボス(マンガ「ワル」の氷室にそっくり)と昔つきあっていたとかなんとかで、同じ班にいた転校生のぼくが彼女と親しく話すのがムカつくらしく呼び出された。
それがつまづきのもとか、体育祭や修学旅行で、男でグループを作るとき、不良でもなく、頭がいいわけでもなく、スポーツができるわけでもない、目立たないグループにぼくは押し込まれた。これはほんとうに冴えなかった。同じ班にいたSは、極度の近視で母子家庭の「イケてない」代表のような男だったが、中3のとき、彼と気があって、いつも一緒だった。彼の家に遊びにいったことも何度かあるが、昼なお陽がささぬ湿っぽい部屋で、そこにいるだけで気がめいってくるのだった。
ただ、ぼくは同じクラスのHUという、中学生にしては色っぽい女子と相思相愛になって、グループでデートなどした。
なんとも恥ずかしい、かすり傷だらけの中学時代を、「アメトーク」を見ながら憶い出していた。「イケてないグループ」に原始人のような男子Yがいて、おそらく成績はオール1だったと思うが、勉強はおろか、社会常識も何も知らない男だった。修学旅行の部屋割りで、「イケてない」が一緒になって、そこで、「アメートーク」でも触れていたが、好きな女の子は、とか「女子」の話になり、Yが、男女の生殖について、何も知らないことがわかった。一生懸命、説明すると、「ウソや、ウソや」と言って、心底驚いたらしく、布団をかぶって泣き出した。信じられない思いだった。
ただYは動物や昆虫が好きで、例えば一緒に学校から帰る途中、まだ田畑が広がる通学路だったのだが、目の前をひらひら飛んでいる蝶を、すっと手を伸ばすと、過たず手にキャッチできる特技があった。われわれが真似ると、蝶はひらひらと無情にも逃げていく。「Y、もういっぺん、やってみぃ」というと、この原始人、ハナをかむより簡単に、蝶を手づかみするのだった。板でかこった小屋のような家の十畳ぐらいの一間に、兄妹7、8人いる家族でくらしていたが、いまごろどうしているだろうか。
前述の不良グループから、小物すぎてこぼれ落ちたKという背の小さな男が、途中から、われわれ「イケてないグループ」に加わるようになり、彼はビートルズに夢中で、そのころ、ぼくもビートルズを聞いていたので、よくビートルズを歌いながら、あぜ道のような細い道を歩いて一緒に帰ったが、(ちなみに、このイケてないグループはいずれもクラブには所属していない。ぼくは美術部に最初入ったが、すぐ辞めてしまった)、彼はあまりに低学力で、英語の歌詞カードがまったく読めず、耳で聞いて覚えたので、でたらめな(ハナモゲラのような)歌詞で歌っていた。ザ、ロンゲン、ワイリン、ロー、という感じ。いまごろどうしているだろうか。
ほんとうに、いまでも町を歩いていて、信号待ちしているときなど、急に過去の消したいような恥ずかしい話を思いだして、青になっても歩き出せないときがある。いいことも少しはあったと思うけど、それはあんまり普段、憶い出さない。心に焼き付く熱さが違うのだろう。
しかし、負け惜しみのようだが、この「イケてない」タイプのほうが、しょっちゅうビクビク暮しているので、感受性が豊かになるのでは、と思うことはある。たぶん、急に「イケてる」タイプに鞍替えすることはあり得なく、このまま「イケてない」人生を送るのか。まあ、それも仕方ないと思う秋である。