やっぱり呑んだ

okatake2009-06-02

6月20日、仙台で「海炭市叙景」映画化に向けての、講演に呼ばれており、予算内で移動するため、格安航空券をあれこれメールチェックして、申し込むが、行きが満席。前日に乗り込むことにした。ホテルをもう一泊取らなくてはならず、いろいろ大変だ。最初は、東京と函館を7日間有効の、新幹線も乗れる切符で、青森下車、帰りには仙台へ寄ってと考えて、窓口で切符を手配したら、帰りは仙台途中下車ができないと知らされる。仙台、21日、行けなくなった。しかし、6月25日から、大人の休日の特別切符で、1万2000円で、三日間有効JR東日本で使えるのがあり、これで、BOOK BOOK sendaiへ行くかもしれません。
山本善行の「古書善行堂」は、内装の業者が入り、エンジンがあたたまってきた。もう苦悩の峠は越えたから、あとはやるだけ。こんなにみんなが心配し、期待している古本屋の開店は、ちょっと例がないのではないか。
椎名町「みのる書房」で買った舟越保武『石の音、石の影』を読んでいるが、やっぱりいいですねえ。長女が生まれたとき、大学で教わったことがあるというだけで、高村光太郎の家へいきなり訪ねていって、名付け親になってもらう話がある。オンナの名前はチエ子しか思いつかない、しかし智恵子は不幸な死に方をしたから、千枝子にしようと言って、夕方までに書いておくから夕方また来てくれ、と光太郎がいう。きびきびした叙述が、光太郎という人物を大きく見せる。長男が赤ん坊のとき死んで、セルロイドの玩具を買いに町に飛び出して行く話もいい。義母に冷たくあたり、長じて、義母の苦しみを理解し、しかし彼女は自殺をする、という壮絶な話も淡々と書き感銘を与える。ところどころ挟み込まれた彫刻、デッサンの口絵写真もいい。ちくま文庫に名著『巨岩と花びら』が入っていたが、これなど、よく文庫にしたなあ。「みのる書房」には、この元本と佐藤忠良との対談集もあった。あの対談集も買っておくべきだったなあ。文章なんて、修行していいものが書けるとは限らないのだ。直観と観察、凝視と象徴、それにけっきょくはセンスの問題だ。音楽家、美術家、俳優に名文家が多いことは重要だ。
日本映画専門チャンネルで、タナダユキ赤い文化住宅の初子」をおもしろく見る。父親は失踪、母親は労苦で死に、文化住宅に残されて生きる兄妹。どん底の貧乏、不幸まみれの中三の妹・初子を中心に描く。初子が『赤毛のアン』を、自分はキライだが、母親への思慕として読むシーンが何度か出て来る。初子を演じた東亜優が哀しく、美しい。最初、広島弁かと思ったが、最後の駅のシーンで「鞆ノ浦観光ホテル」の看板が見える。福山、だ。「ビスケ食べり」(ビスケットを食べなさい)なんて方言は、たしかに広島弁ではない。マンガ原作者の松田洋子は、大阪生まれながら、父親が事業に失敗し、5才で福山へ。高校卒業後上京するまで福山。どうも初子のモデルは自分らしい。自堕落で、まったくやる気のない女教師が出てくるが、半分ぐらいまで坂井真紀とは気づかなかった。回想シーンと遺影で登場する鈴木砂羽がいい。ラーメン屋の酷薄なおやじに鈴木慶一
配給はスローライナー。プロデューサーは越川くん。
TBSへ、『太田和彦の今夜は家呑み』の原稿を送る。今夜は呑まないでおこうと思ったが、こんな本の紹介文を書いていたら、やっぱり呑んじゃった。阪神、また負けた。「週刊ブックレビュー」の出演依頼あり。