ハケ散歩

okatake2009-02-03

歯の治療、ついでに国立へ。昼飯食べて、「ブ」で文庫4冊拾う。ピーター・ラヴゼイ『猟犬クラブ』文春。「海千山千のミステリ・マニアを相手に」というのがおもしろそう。ラヴゼイには『偽のデュー警部』という傑作があり、倉橋由美子も絶賛しているんだ。ほか、ちくまから森類『鴎外の子供たち』、入江曜子『我が名はエリザベス』、それに保育社カラーブックス『京王帝都』を。CD売り場で、新潮の朗読シリーズから、『高野聖』(佐藤慶)を980円で。
自転車で谷保天満宮まで行き、ここで自転車を停める。谷保は学問の神様。ただいま商売繁昌なり。露店が出ていた。神社と言えば、たいてい階段を上っていくが、ここは低地にあり。階段を下りていくのが珍しい。神社を抜け、徒歩でひさしぶりにハケ散歩。どこか地方の田舎町を歩いているような。そのうち雑木林を抜け、湧水沿いの小径にたどりつく。途中、公開されている古民家には、コドモづれのお母さんたちがたくさん集まっている。「豆まき」のイベントが開かれるらしい。新聞社の取材も来ていた。矢川駅からまた谷保へ戻る一時間ほどの散歩になった。もう、空気も、そよぐ風の匂いも春の気配。足からじんじんんと血が巡り、汗をかいた。今度は立川まで歩いてみよう。
貧乏ネタの採集から、小島祐馬という京大教授にいきあたり、彼に学んだ竹之内静雄『先師先人』講談社文芸文庫に、記述ありと知り、さっそくひもとく。竹之内は筑摩書房の重役としてその名を知られているが、最初は河出書房の編集者だった。上司にM・Mという人物がいて、これが河出の信用をつぶす元凶として、批判されている。1940年代、河出はリベートを持ってこないと下請けには仕事を出さない、誤植のない本を作ることができない出版社だった。金庫からお金がなくなったこともある。末川博に原稿依頼のため訪ねたところ「M・Mがいるかぎり、河出の仕事は一切しません」と言う。このM・Mと誰か。
「『屁』という改造社発行の著書があった」という記述でわかった。『屁』『褌』『臍』という三部作で、古書界では知られる福富織部、この本名が松本實だ。
竹之内は我慢ならず、河出を退社、中村光夫のすすめで創業まもない筑摩書房へ入社する。詳述しないが、この中村光夫の描き方もいい。そのほか、吉田健一の追悼も印象深いが、なによりおもしろいのは三好達治追悼の「吹雪の中の友情」。通夜の席での今日出海による三好の回想がめちゃくちゃおもしろい。これは実物にあたっていただきたい。